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[10](1915年8月29日)高橋秀松あて 葉書

宮城県増田町 高橋秀松様
八月廿九日 遠野ニテ 宮澤賢治

今朝から十二里歩きました 鉄道工事で新らしい岩石が沢山出てゐ ます 私が一つの岩石をカチツと割りますと初めこの連中が瓦斯だ つた時分に見た空間が紺碧に変つて光つてゐることに愕いて叫ぶこ ともできずきらきらと輝いてゐる黒雲母を見ます 今夜はもう秋で す  スコウピオも北斗七星も願はしい静かな脈を打ってゐます