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文語詩五十編(41〔血のいろにゆがめる月は〕異稿)

岩手病院

血のいろにゆがめる月の
今宵また桜をのぼり
患者たち廓のはづれに
まがごとの兆を云へり、

  あゝされど春のをとめら
  いそがしく氷を割けり

熱植ゑし黒き綿羊
月しろの草地に狂ひ
コカインのかをりのなかを
いそがしく過ぐる医師あり

  しかもあれ 春のをとめら
  水銀の目盛を数ふ