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文語詩一百編(64 涅槃堂 異稿)

涅槃堂(先駆形B)

よべよりの雪なほやまず
松が枝も重りにけらし
棟遠き羅漢堂には
衆僧いま般若を転ず

定省を父母に欠き
養ひを弟になさで
ひたすらに求むる道の
疾みてなほ現前し来ず

起き出でて北をのぞまじ
松なみのけむりにも似ん
雪の山また雪の丘
ふるさとのいとゞ遠しも

かの町の淫れをみなと
事ありと人は云へども
なほしかの大悲のひとみ
おゝ難陀師をまもりませ

松の枝あえかに折れて
どと落ちし雪の音あり
衆僧いま看経を終へ
こなたへととめくるごとし