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三三〇

初冬幻想

一九二四、一〇、二六、

……いゝか、
  周天は連亘す浄命の幡
……無律!
……無律林上日は燦々
……無韻!
……十万無韻蒼亦蒼
……妄!
……妄りに霜葉を踏んで帰還を忘る
……それではこんどはおれが出す
  天朗れて影明なり霜葉林
……月並!
……月並なんてどうして漢詩へ入れられる
……恐れ入ったか
……何が恐れ入るもんか 暴評だ
……では譲歩して 俗!
……俗塵洗ひ尽す風凛々
……水凛々、あっはっはっは
……漫罵却って遠し枯草の原
……枯草の原、わっはっはっは
……更に一嘲を加へて更に閑森
……全編よろよろ!
……おい、風凛々といふのは何がおかしい
……おかしいな
……枯草の原といふのは何がおかしい
……とにかく、おかしいな
……よし、それならこんどは天狗問答で行かう
……何をか辞せん
……鈴蘭実を熟れて兎眼に似たり
  野蓐既に古びて黄なるを如何
……雪は被って白し五月は萌して青し
……諸宝の天蓋燃えなんとして如何
……爪哇の潜王胡瓜を啖ふ
……風の王位に即くものは誰ぞ
……adagioは弦にはじまる
……風に鉱質の二色性あり
……冠毛燈!ドラモンド燈!

(「〔うとうとするとひやりとくる〕」下書稿〔二〕)