-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第999号--2018.04.14------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(52)」「〔雪とひのきの坂上に〕」

-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
-〔話題〕---------------------------------------------------
「河原坊(山脚の黎明)」「山の晨明に関する童話風の構想」
------------------------------------------------------------

 今回は前回の翌日、1925年8月11日の二篇です。

 どちらもかなり有名なもので、「河原坊(山脚の黎明)」の方は
河原坊で野宿していた賢治が幻の修行僧を見るというものです。

 早池峰山は昔から有名な修験の山ですが、東北ではよくある、慈
覚大師円仁が開祖とされています。慈覚大師は天台宗の僧ですが、
その後の変遷もあって、賢治は下書稿では「真言か天台かわからな
い」と言っています。

 河原坊は早池峰の登山口ですが、かなり高いところにあり、そこ
までクルマで行けます。河原坊からは早池峰山頂はすぐ目の前に見
えます(登ると大変ですが)。

 ただし、現在はこの登山口からの早池峰登山はできなくなってい
るようです。

 駐車場には「山の晨明に関する童話風の構想」の詩碑が立ってい
て、実に立派なものです。この碑は小学生の子が字を書いているそ
うで、いつもこの詩の話になると紹介しますが、なかなかに感動的
なものです。

 異世界との関わりを感じさせる前の詩と違い、こちらは「童話風
の構想」で、全体に童話を意識しているようです。

 ともあれ、この日に賢治は一人で早池峰山に登ったことは間違い
ありません。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

「山の晨明に関する童話風の構想」詩碑
http://www.ihatov.cc/monument/070.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

おお青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルセンを読んでしまったら
じぶんでがまのはむばきを編み
經木の白い帽子を買って
この底なしの蒼い空氣の渕に立つ
巨きなお菓子の塔を攀ぢよう

             宮 澤 賢 治

 北上山地の最高峰である早池峰山には、賢治は生涯何度も登った
ようですが、この作品は1925年8月に一人で登った時のものです。
この時の様子については、「河原坊-早池峯 詩群」でも触れました。

 目の前の早池峰山は、「この底なしの蒼い空氣の渕に立つ巨きな
お菓子の塔」としてそそり立ち、全篇に夏の青空のような解放感が
あふれています。賢治は一人で山道を歩きながら、「イーハトーボ
のこどもたち」に、心のなかで呼びかけます。

 学校は夏休み中ですが、子どもたちのことを考えていたようです。

 詩碑は、早池峰山の南の登山口である「河原坊」というところに
あります。岳川という清流に沿ってかなり山奥に入ったところです
が、毎年7月〜8月の間だけ、花巻駅前からここまで一日二往復のバ
スが出て、登山客を運びます。 花巻から一時間半ほどでした。

 碑の文字は、「イーハトーボのこどもたち」からの公募で採用さ
れた、当時小学校四年生の女の子の書だということです。力づよく、
真摯なけなげさに満ち ていました。

 『新宮澤賢治語彙辞典』で 原子朗氏は、この碑を、「数ある賢
治詩碑中の白眉」と呼んでおられます。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

河原の坊コースの通行止について
https://www.city.hanamaki.iwate.jp/shisetsu/801/804/p004010.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 昨年5月26日(木曜日)の大雨によって河原の坊登山道の一部が崩
落し、通行ができない状況にあり、当分の間、通行止めとしており
ます。

注)現時点で復旧のめどは立っていません。

 早池峰山に登山される方は、小田越コースをご利用ください。

 なお、小田越登山口には駐車場がございませんので、お車でお越
しの際は、河原の坊駐車場をご利用ください。

 河原の坊駐車場から小田越登山口までは、徒歩40分から50分(2
キロメートル)程度です。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(052)〕----------------------------------

「河原坊(山脚の黎明)」「山の晨明に関する童話風の構想」

------------------------------------------------------------
■「河原坊(山脚の黎明)」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

三七四
     河原坊(山脚の黎明)
                    一九二五、八、一一、

わたくしは水音から洗はれながら
この伏流の巨きな大理石の転石に寝やう
それはつめたい卓子だ
じつにつめたく斜面になって稜もある
ほう、月が象嵌されてゐる
せいせい水を吸ひあげる
楢やいたやの梢の上に
匂やかな黄金の円蓋を被って
しづかに白い下弦の月がかかってゐる
空がまた何とふしぎな色だらう
それは薄明の銀の素質と
夜の経紙の鼠いろとの複合だ
さうさう
わたくしはこんな斜面になってゐない
も少し楽なねどこをさがし出さう
あるけば山の石原の昧爽
こゝに平らな石がある
平らだけれどもここからは
月のきれいな円光が
楢の梢にかくされる
わたくしはまた空気の中を泳いで
このもとの白いねどこへ漂着する
月のまはりの黄の円光がうすれて行く
雲がそいつを耗らすのだ
いま鉛いろに錆びて
月さへ遂に消えて行く
   ……真珠が曇り蛋白石が死ぬやうに……
寒さとねむさ
もう月はたゞの砕けた貝ぼたんだ
さあ ねむらうねむらう
   ……めさめることもあらうし
     そのまゝ死ぬこともあらう……
誰かまはりをあるいてゐるな
誰かまはりをごくひっそりとあるいてゐるな
みそさざい
みそさざい
ぱりぱり鳴らす
石の冷たさ
石ではなく二月の風だ
   ……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
誰か来たな
   ……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
   ……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
   ……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
そこの黒い転石の上に
うす赭いころもをつけて
裸脚四つをそろへて立つひと
なぜ上半身がわたくしの眼に見えないのか
まるで半分雲をかぶった鶏頭山のやうだ
   ……あすこと黒い転石で
     みんなで石をつむ場所だ……
向ふはだんだん崖になる
あしおとがいま峯の方からおりてくる
ゆふべ途中の林のなかで
たびたび聞いたあの透明な足音だ
……わたくしはもう仕方ない
  誰が来やうに
  こゝでかう肱を折りまげて
  睡ってゐるより仕方ない
  だいいちどうにも起きられない……
       :
       :
       :
     叫んでゐるな
   (南無阿弥陀仏)
   (南無阿弥陀仏)
   (南無阿弥陀仏)
 何といふふしぎな念仏のしやうだ
 まるで突貫するやうだ
   :
   :
   :
 もうわたくしを過ぎてゐる
 あゝ見える
 二人のはだしの逞ましい若い坊さんだ
 黒の衣の袖を扛げ
 黄金で唐草模様をつけた
 神輿を一本の棒にぶらさげて
 川下の方へかるがるかついで行く
 誰かを送った帰りだな
 声が山谷にこだまして
いまや私はやっと自由になって
眼をひらく
こゝは河原の坊だけれども
曾ってはこゝに棲んでゐた坊さんは
真言か天台かわからない
とにかく昔は谷がも少しこっちへ寄って
あゝいふ崖もあったのだらう
鳥がしきりに啼いてゐる
もう登らう

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

三七四
     河原坊(山脚の黎明)
                    一九二五、八、一一、

わたくしは水音から洗はれながら
この伏流の巨きな大理石の転石に寝やう
それはつめたい卓子だ
じつにつめたく斜面になって稜もある
ほう、月が象嵌されてゐる
せいせい水を吸ひあげる
楢やいたやの梢の上に
匂やかな黄金の円蓋を被り
しづかに白い下弦の月がかかってゐる
空がまた何とふしぎな色だらう
それは薄明の銀の素質と
夜の経紙の鼠いろとの複合だ
さうさう
わたくしはこんな斜面になってゐない
も少し楽なねどこをさがし出さう
あるけば山の石原の昧爽
こゝに平らな石がある
平らだけれどもここからは
月のきれいな円光が
楢の梢にかくされる
わたくしはまた空気の中を泳いで
このもとの白いねどこへ漂着する
月のまはりの黄の円光がうすれて行く
雲がそいつを耗らすのだ
いま鉛いろに錆びて
月さへ遂に消えて行く
   ……真珠が曇り蛋白石が死ぬやうに……
寒さとねむさ
もう月はたゞの砕けた貝ぼたんだ
さあ ねむらうねむらう
   ……めさめることもあらうし
     そのまゝ死ぬこともあらう……
誰かまはりをあるいてゐるな
誰かまはりをごくひっそりとあるいてゐるな
みそさざい
みそさざい
ぱりぱり鳴らす
石の冷たさ
石ではなく二月の風だ
   ……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
誰か来たな
   ……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
   ……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
   ……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
そこの黒い転石の上に
うす赭いころもをつけて
裸脚四つをそろへて立つひと
なぜ上半身がわたくしの眼に見えないのか
まるで半分雲をかぶった鶏頭山のやうだ
   ……あすこと黒い転石で
     みんなで石をつむところだ……
そこらはだんだん崖になる
あしおとがいま峯の方からおりてくる
ゆふべ途中の林のなかで
たびたび聞いたあの透明な足音だ
……わたくしはもう仕方ない
  誰が来やうに
  こゝでかう肱を折りまげて
  睡ってゐるより仕方ない
  だいいちどうにも起きられない……
       :
       :
       :
   (南無阿弥陀仏)
   (南無阿弥陀仏)
   (南無阿弥陀仏)
 何といふふしぎな念仏のしやうだ
 まるで突貫するやうだ
       :
       :
       :
 もうわたくしを過ぎてゐる
 あゝ見える
 二人のはだしの逞ましい若い坊さんだ
 黒の衣の袖を扛げ
 黄金で唐草模様をつけた
 神輿を一本の棒にぶらさげて
 川下の方へかるがるかついで行く
 誰かを送った帰りだな
 声が山谷にこだまして
いまや私はやっと自由になって
眼をひらく
こゝは河原の坊だけれども
曾ってはこゝに棲んでゐた坊さんは
真言か天台かわからない
とにかく昔は谷がも少しこっちへ寄って
あゝいふ崖もあったのだらう
鳥がしきりに啼いてゐる
もう登らう

------------------------------------------------------------
(下書稿1断片)
------------------------------------------------------------

三七四
                    一九二五、八、一一、

谷の上が(以下不明)
わたくしは水しばらくこの(一字不明)らな(約二字不明)の
水の音から洗はれながら
寒水石の盤にねむらう
盤といふよりむしろ一つの卓である
残りの月が上った空に(約三字不明)ゐる
西の(数文字不明)て夢(以下不明)

------------------------------------------------------------
■「山の晨明に関する童話風の構想」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

三七五
     山の晨明に関する童話風の構想
                    一九二五、八、一一、

つめたいゼラチンの霧もあるし
桃いろに燃える電気菓子もある
またはひまつの緑茶をつけたカステーラや
なめらかでやにっこい緑や茶いろの蛇紋岩
むかし風の金米糖でも
waveliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな
大きな乾葡萄レジンがついてゐる
みやまうゐきゃうの香料から
蜜やさまざまのエッセンス
そこには碧眼の蜂も顫える
さうしてどうだ
風が吹くと 風が吹くと
傾斜になったいちめんの釣鐘草ブリューベルの花に
かゞやかに かがやかに
またうつくしく露がきらめき
わたくしもどこかへ行ってしまひさうになる……
蒼く湛えるイーハトーボのこどもたち
みんなでいっしょにこの天上の
飾られた食卓に着かうではないか
たのしく燃えてこの聖餐をとらうではないか
そんならわたくしもたしかに食ってゐるのかといふと
ぼくはさっきからこゝらのつめたく濃い霧のジェリーを
のどをならしてのんだり食ったりしてるのだ
ぼくはじっさい悪魔のやうに
きれいなものなら岩でもなんでもたべるのだ
おまけにいまにあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けた
黄金の輪宝くるまがのぼってくるか
それともそれが巨きな銀のラムプになって
白い雲の中をころがるか
どっちにしても見ものなのだ
おゝ青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルセンを読んでしまったら
じぶんでがまのはむばきを編み
経木の白い帽子を買って
この底なしの蒼い空気の淵に立つ
巨きな菓子の塔を攀ぢやう

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

三七五
     山の晨明に関する童話風の構想
                    一九二五、八、一一、

つめたいゼラチンの霧もあるし
桃いろに燃える電気菓子もある
またはひまつの緑茶をつけたカステーラや
きらめく露の釣鐘草ブリューベル
なめらかでやにっこい緑や茶いろの蛇紋岩
みやまうゐきゃうの香料から
蜜やさまざまのエッセンス
もう山ぢゅうの花いっぱいに
碧眼の蜂も虻も顫える
むかし風の金米糖でも
waveliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな
大きな乾葡萄レジンがついてゐる
蒼く湛えるイーハトーボのこどもたち
みんなでいっしょにこの天上の
飾られた食卓に着かうではないか
たのしく燃えてこの聖餐をとらうではないか
そんならわたくしもたしかに食ってゐるのかといふと
ぼくはさっきからこゝらのつめたく濃い霧のジェリーを
のどをならしてのんだり食ったりしてるのだ
ぼくはじっさい悪魔のやうに
きれいなものなら岩でもなんでもたべるのだ
おまけにいまにあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けた
黄金のラムプが(七字不明)
それともそれが銀いろをしたラムプに化けて
白い雲の中をころがるか
どっちにしても見ものなのだ
おゝ青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルセンを読んでしまったら
(一行不明)
巨きな白い帽子(数文字不明)たなら
この底(以下不明)

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後)
------------------------------------------------------------

三七五
     下背に日の出をもつ山に関する童話風の構想
                    一九二五、八、一一、

つめたいゼラチンの霧もあるし
桃いろに燃える電気菓子もある
またはひまつの緑茶をつけたカステラや
なめらかでやにっこい茶や橄欖オリーブの蛇紋岩
みやまつりがねにんじんの青い花には露がきらめき
ブリューベルの花きらめくきらめく
みやまうゐきゃうの香料から
蜜やさまざまのエッセンスには
碧い眼をしたすがるもふるふ
むかし風の金米糖でも
waveliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな
干した葡萄がついてゐる
こいつがみんなほんもので
きみたちにも上げられるなら
どいなにいゝか
もっともぼくはさっきから
ここらのつめたく濃い霧のジェリーを
のどをならしてのんだり食ったりしてるが
けれどもいったいどういふわけで
これがほんものでないのだらう
そのうちいまにあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けて
光焔ハローをあげた青い宝珠がでてくるか
それともそいつが巨きな銀のラムプになって
まっ白な雲の野原をころがるか
さうでもすればあるひはいゝかも知れないな

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

三七五
     下背に日の出をもつ山に関する童話風の構想
                    一九二五、八、一一、

ゼラチンのつめたい霧もながれてくるし
上の方には桃いろや朱の電気菓子が飛んでゐる
またはいまつの緑茶をつけたカステラや
脂っこい(二字不明)緑や茶いろの蛇紋岩
みやまうゐきゃうの香料から
蜜やさまざまのエッセンスにも
(一字不明)い(二、三字不明)バターは(数文字不明)
  ……そこには碧眼の蜂もふるふ……
むかし風の金米糖でも
waveliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな
干した葡萄がついてゐる
蒼く湛える北上河谷のこどもたち
みんなでいっしょにこの天上の
飾られた食卓に着かうではないか
たのしく燃えてこの聖餐をとらうではないか
ここらのつめたく濃い霧のジェリーを
のどをならしてのんだり食ったりしやうではないか
おまけにいまにあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けて
光焔をあげた青い宝珠がでてくるか
それともそいつが巨きな銀のラムプになって
まっ白な雲の野原をころがるか
どっちにしても見ものなのだ

------------------------------------------------------------
-〔文語詩稿未定稿(079)〕----------------------------------
------------------------------------------------------------
■「〔雪とひのきの坂上に〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

     〔雪とひのきの坂上に〕

雪とひのきの坂上に
粗き板もてゴシックを
辛く畳みて写真師の
聖のねぐらを営みぬ

ぼたと名づくる雪ふりて
いましめさけぶ橇のこら
よきデュイエットうちふるひ
ひかりて暮るゝガラス屋根

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

雪とひのきの坂上に
粗き板もてゴシックを
わずかに畳む写真店

酵母のさまに粉雪して
こらそりわたす暮れちかく
頬べに赤くよそほひて
たけいとひくきたはれめの
いのりのふみをたづさえて
つゝましやかに入り行ける

さらにひとたび粉雪して いましめさけぶ橇のこら
よきデュイエットうちふるひ ひかりて暮るゝガラス屋根

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後2)
------------------------------------------------------------

雪とひのきの坂上に
粗き板もてゴシックを
わずかに畳む写真店

酵母のさまに粉雪して
こらそりわたす暮れちかく
頬べに赤くよそほひて
たけいとひくきたはれめの
祈りのふみをたづさえて
つゝましやかに入り行ける

さらにひとたび粉雪して
いましめ叫ぶ橇のこら
よきデュイエットうちふるひ
ひかりて暮るゝガラス屋根

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後1)
------------------------------------------------------------

雪とひのきの坂上に
粗き板もてゴシックを
わずかに畳む写真店

酵母のさまに粉雪して
こらそりわたす暮れちかく
頬べに赤くよそほひて
たけいとひくきたはれめの
祈りのふみをたづさえて
つゝましやかに入り行ける

さらにひとたび粉雪して
よきデュイエットふるふとき
毛布荷へる行商の
二人ぞ坂を下り来り
この教会は写真屋を
兼ねたるのみかこのまひる
なんぞなめげに喚ぶやと
舌打ちしつゝ去りにけり

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

風いと寒く粉雪して
児ら橇引けるひるすぎを
たけいとひくきたはれめの
頬べに赤くよそほひて
その写真屋に入り行きにけり

--〔後記〕--------------------------------------------------

 ついに999号になりました。来週は記念の1000号です。ご
愛読ありがとうございます。

 「春と修羅 第二集」も終りが見えてきました。あと数回で終っ
て、第三集に入ります。あとは体力的に持つところまでですね。

------------------------------------------------------------
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--通巻--999号---------- e-mail why@kenji.ne.jp--------------
--発行--渡辺--宏------- URL http://why.kenji.ne.jp/
------------------------------------------------------------
 購読者数970名です。ご購読ありがとうございます。
------------------------------------------------------------
私あてのメールのあて先は、
why@kenji.ne.jp
私のホームページ(宮沢賢治童話館、全詩篇など)は
http://why.kenji.ne.jp/ です。
バックナンバーもすべて、このページで読めます。
【まぐまぐ】
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
マガジンIDは10987です。
このメールマガジンの登録や解除は
http://why.kenji.ne.jp/ です。
=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/