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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第993号--2018.03.03------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(46)」「〔棕櫚の葉やゝに痙攣し〕」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「春谷暁臥」「国立公園候補地に関する意見」
------------------------------------------------------------

 今回は前回の最後の詩「〔つめたい風はそらで吹き〕」の次の日、
1925年5月11日の日付を持つ二篇です。

 前日の日曜日から森佐一をさそって岩手山に登ったのですが、こ
の日は月曜日、賢治は休暇をとっていたのでしょう。

 「春谷暁臥」の方ではその森佐一が「佐一」として実名で出てき
ます。下書稿3では「幻」となっていますが、これも森佐一の筆名
である「北光路幻」からとったものです。

 森佐一は大変な早熟で、中学生にしてこんな筆名を使って新聞に
記事を書いていたり、「岩手詩人協会」を作ったりしています。賢
治の中学生時代とは大違いですが、一つには時代背景の変化もあっ
たのでしょう。

 もう一つの「国立公園候補地に関する意見」は岩手山の熔岩がそ
のまま露出している「焼走り熔岩流」に関するものですが、賢治の
公園化構想はひどく俗物的なものとして語られています。

 元の題名は「黒人技師の鎔岩流に対する意見」となっていて、賢
治の作品にいくつかある黒人が語る形を意識していたことがわかり
ます。

 オーケストラの演奏に「野砲」が入るというのはチャイコフスキ
ーの作品にありました。あれはナポレオン軍に対する勝利の号砲と
して登場しますが、賢治のはその砲弾で観客が本物の三途の川に行
ってしまうという、過激なものです。

 こういう馬鹿げた、喜劇的な発想もまた、賢治の得意としたとこ
ろでした。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

春谷暁臥 詩群
http://www.ihatov.cc/series/shunkoku.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 賢治は1925年2月、森 佐一 と名乗る詩人から、「岩手詩人協会
という会を作るので加入してくれないか」という手紙を受け取りま
した。

 この勧誘に対して、賢治は謙遜して丁重に辞退しましたが、その
後、二人の文通はつづくことになります。

 森氏が別の筆名で発表していた詩を賢治もすでに読んでいたこと
がわかり、「尊敬していた」むねも、書き送っています。

 まもなく賢治は、森 佐一 氏を盛岡に訪ねました。しかし、そこ
に現れたのが、まだ中学生の少年であったことに、彼はぼうぜんと
してしまいました。「『これは変だ、何か、まちがったぞ』という
ような顔になって、しばらく私の顔をジーッと見ていた」と、後年
森氏は書いています。

 時に賢治は28才、佐一は17才ですから、年齢ではちょうど賢治の
農学校の教え子と同じような関係にあたりますが、賢治はこの早熟
の詩人が、『春と修羅』のほんとうの理解者であることも発見し、
二人の交友は、さらに深まりました。

 上の三つの作品は、この年の5月に賢治が佐一を誘って、小岩井
駅から小岩井農場を抜けて、岩手山麓を西根の方へ向かうという、
一泊(野宿)二日の徒歩旅行をした間に、スケッチされたものです。

 「三三五 〔つめたい風はそらで吹き〕」には、一日目の野宿の
夜の様子が記され、「三三六 春谷暁臥」には、翌朝の目覚めの情
景が描かれています。本文中に「佐一」という固有名詞まで書き込
んであるのは、やはりこの体験が、賢治にとっても大切なものだっ
たのだろうと思います。

 松の枯葉のたまったところを「高原特製のすばらしいベッドです
よ」と言って勧めたり、その寝床に入ってから「岩手山麓、無料木
賃ホテルですナ」と笑ったり、賢治の様子は佐一にとっても驚きの
連続でした。

 「この夜行中、私は全く恐怖の感覚を持たなかった。岩手山や山
麓の主(ぬし)のような人と歩いているという安心感があった」と、
佐一は後で回想しています。

 「三三七 国立公園候補地に関する意見」は、二日目の日中に焼
走り熔岩流あたりを歩いているときの、賢治の空想です。

 途中に挿入される「パンをおあがりなさい」というフレーズは、
賢治が食料として、まるのままの食パン一斤を「土いろのハトロン
紙に包んで」携行していたことに対応しています。これを勧められ
た佐一は、それが「西洋料理のフルコースよりも豪華だと感じた」
と、書き残しています。

 森 佐一(筆名 森 荘已池)氏は、のちに直木賞を受賞し、宮澤
賢治研究家としても大きな足跡を残しましたが、1999年に死去され
ました。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(046)〕----------------------------------

「春谷暁臥」「国立公園候補地に関する意見」

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■「春谷暁臥」
------------------------------------------------------------
(本文=定稿)
------------------------------------------------------------

三三六
     春谷暁臥
                    一九二五、五、一一、

酪塩のにほひが帽子いっぱいで
温く小さな暗室をつくり
谷のかしらの雪をかぶった円錐のなごり
水のやうに枯草くさをわたる風の流れと
まっしろにゆれる朝の烈しい日光から
薄い睡酸を護ってゐる
  ……その雪山の裾かけて
    播き散らされた銅粉と
    あかるく亘る禁欲の天……
佐一が向ふに中学生の制服で
たぶんしゃっぽも顔へかぶせ
灌木藪をすかして射す
キネオラマ的ひかりのなかに
夜通しあるいたつかれのため
情操青く透明らしい
  ……コバルトガラスのかけらやこな!
    あちこちどしゃどしゃ抛げ散らされた
    安山岩の塊と
    あをあを燃える山の岩塩しほ……
ゆふべ凍った斜子なゝこの月を
茄子焼山からこゝらへかけて
夜通しぶうぶう鳴らした鳥が
いま一ぴきも翔けてゐず
しづまりかへってゐるところは
やっぱり餌をとるのでなくて
石竹いろの動因だった
  ……佐一もおほかたそれらしかった
    育牛部からやま地へ抜けて
    放牧柵を越えたとき
    水銀いろのひかりのなかで
    杖や窪地や水晶や
    いろいろ春の象徴を
    ぽつりぽつりと拾ってゐた……
       (蕩児高橋亨一が
        しばし無雲の天に往き
        数の綏女とうち笑みて
        ふたたび地上にかへりしに
        この世のをみなみなしく
        そのかみ帯びしプラチナと
        ひるの夢とを組みなせし
        鎖もわれにはなにかせんとぞ嘆きける)
    羯阿ぎゃあぎあ 居る居る鳥が立派に居るぞ
    羯阿迦 まさにゆふべとちがった鳥だ
    羯阿迦 鳥とは青い紐である
    羯阿迦 二十八ポイント五!
    羯阿迦 二十七!
    羯阿迦 二十七!
はじめの方が声もたしかにみじかいのに
二十八ポイント五とはどういふわけだ
帽子をなげて眼をひらけ
もう二里半だ
つめたい風がながれる

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲後)
------------------------------------------------------------

三三六
     春谷暁臥
                    一九二五、五、一一、

酪塩のにほひが帽子いっぱいで
温く小さな暗室をつくり
谷のかしらの雪をかぶった円錐のなごり
水のやうに枯草くさをわたる風の流れと
まっしろにゆれる朝の烈しい日光から
薄い睡酸を保護してゐる
  ……その雪山の裾かけて、
    播き散らされた銅粉と
    あかるく亘る禁慾の天……
「幻」が向ふに中学生の制服で
たぶんしゃっぽも顔へかぶせ
灌木藪をすかして射す
キネオラマ的光にまぶれ
夜通し歩いたつかれのため
情操青く透明らしい
  ……コバルトガラスのかけらやこな!
    あちこちどしゃどしゃ抛げ散らされた
    安山岩の塊と
    あをあを燃える山の岩塩しほ……
ゆふべ凍った斜子の月を
くらかけ山からこゝらへかけて
夜通しぶうぶう鳴らした鳥が
いまいっぴきも翔けてゐず、
しづまりかへってゐるところは
やっぱり餌をとるのでなくて
やっぱりどうも石竹いろの動因だった
  ……「幻」もおほかたそれらしかった
    育牛部から山へ出て
    放牧柵を越えたとき
    水銀いろのひかりのなかで
    杖や窪地や水晶や
    いろいろ春の象徴を
    ぽつりぽつりと拾ってゐた……
       (蕩児高橋亨一が
        しばし無雲の天に往き
        数の綏女とうち笑みて
        ふたたび地上にかへりしに
        この世のをみなみなしく
        そのかみ帯びしプラチナと
        ひるの夢とを組みなせし
        鎖もわれにはなにかせんとぞ嘆きける)
     羯阿ぎゃーぎや 居る居る鳥が立派に居るぞ
        まさにゆふべとちがった鳥だ
    ─── 鳥とは青い紐である
    ─── 二十八ポイント五!
    ─── 二十七!
    ─── 二十七!
はじめの方が声もたしかにみぢかいのに
二十八ポイント五とはどういふわけだ
帽子をなげて眼をひらけ
もう二里半だ
つめたい風がながれる

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

三三六
     春谷暁臥
                    一九二五、五、一一、

  ……雪の円錐
    その裾かけて
    播き散らされた銅粉と
    あかるく亘る禁慾の天……
帽子をしゃんと顔の上へのせて
このかれ芝へねころべば
かすかに温い酪酸のにほひが
水のやうに谷をわたる風の流れと
まっしろにゆれる朝の烈しい日光から
薄い睡酸を保護するわけ
  ……青いラムプの影法師
    安山岩の卓子つくえいす
    花さきめぐる灌木の群……
       (蕩児高橋亨一が
        しばし無雲の天に往き
        数の綏女とうち笑みて
        ふたたび地上に帰りしに
        この世のをみなみなしく
        そのかみ帯びしプラチナと
        まひるの夢を組みなせし
        鎖もわれにはなにかせんとぞ嘆きける)
  ……コバルトガラスのかけらやこな!
    あをあを燃える山の岩塩しほ……
ゆふべ凍った斜子の月を
くらかけ山からこゝらへかけて
夜通しぶうぶう鳴らした鳥が
いまいっぴきも居ないのは
やっぱりどうも石竹いろの原因らしい
……それに佐一もさうらしい
育牛部から山へ出て
放牧柵を越えたとき
水銀いろのひかりのなかで
杖や蛙や水晶や
いろいろ春の象徴を
ぽつりぽつりと云ってゐた
いまは夜どほしあるいたので
やっぱり睡く向ふに居る
    Gyagya 居る居るちがった鳥だ
    Gyagya 鳥は青い紐である
    Gyagya 二十八ポイント五!
    Gyagya 二十七!
    Gyagya 二十七!
はじめのがいちばん声がみぢかいのに
二十八ポイント五とはどういふわけだ
帽子をなげて眼をひらけ
もう二里半だ
つめたい風がながれる

------------------------------------------------------------
(下書稿2断片)
------------------------------------------------------------

※四片が切り取られて下書稿3に組み込まれている。現存はこの部
分のみ

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(下書稿1推敲後)
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三三六
     春谷暁臥
                    一九二五、五、一一、

    雪の円錐
    その裾かけて播き散らされた銅粉と
    あかるく亘る禁欲の天
酪酸のにほひが帽子いっぱいで
黒くて厚い穹窿を張り
水のやうに谷をわたる風の流れと
まっしろにゆれる朝の烈しい日光から
薄い睡酸を保護してゐる
  ……青いラムプのかげぼうし
    コバルトガラスのかけらや粉
    花さき遶る灌木の群
    卓のかたちの安山岩と
    あをあを燃える山の岩塩
       (蕩児高橋亨一が
        無雲の天に往き数の綏女とうち笑みて
        ふたたび地上に帰りしに
        この世のをみなみな怪しく
        そのかみ帯びしプラチナと
        まひるの夢を組みたりし
        鎖もわれにはなにかせんとぞ嘆きける)
ゆふべ凍った斜子の月を
くらかけ山からこゝらへかけて
夜通しぶうぶう鳴らした鳥が
いまいっぴきもゐないのは
やっぱりどうも屈折率の関係らしい
    Gyagya 別のがいたぞ鳥は青い紐である
    Gyagya 鳥はあんまり生意気である
    Gyagya  味噌漬け 二十八ポイント五!
    Gyagya   みたいな 二十七!
    Gyagya   鳥のつら 二十七!
はじめのがいちばん声がみぢかいのに
二十八ポイント五とはどういふわけだ
帽子を投げて眼をひらけ
つめたい風がながれる

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

三三六
     (一字不明)春(二字不明)
                    一九二五、五、一一、

    雪の円錐
    その裾かけて播き散らされた銅粉と
    あかるく亘る禁欲の天
    あをあを燃える山の岩塩しほ
睡酸のにほひが帽子いっぱいで
帽子はおれの額の上に黒くて厚く
水のやうに谷をわたる風の流れと
まっしろにゆれる朝の烈しい日光とから
(三、四字不明)の睡酸を保護してゐる
  ……青いラムプの影法師
    コバルトガラスのかけらや粉
    花さき遶る灌木とそら
       (蕩児高橋亨一が
        天上に行き数の綏女とうち笑みて
        ふたたび地上に帰りしに
        この世のをみなみな怪しく
        そのかみ帯びしプラチナと
        まひるの夢を組みたりし
        鎖もわれにはなにかせんとぞなげきける)
(一行不明)
(一行不明)
(一行不明)
やっぱり主に屈折率の関係らしい
    Gyagya 鳥は青い紐である
    Gyagya 鳥はあんまり生意気である
    Gyagya 味噌漬けか 二十八ポイント五!
    Gyagya 茶みたいな 二十七!
    Gyagya (二字不明)鳥のつら 二十七!
はじめのがいちばん声がみぢかいのに
二十八ポイント五とはどういふわけだ
眼をひらけ
つめたい風がながれる

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■「国立公園候補地に関する意見」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿3推敲後)
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三三七
     国立公園候補地に関する意見
                    一九二五、五、一一、

どうですか この熔岩流は
殺風景なもんですなあ
噴き出してから何年たつかは知りませんが
かう日が照ると空気の渦がぐらぐらたって
まるで大きな鍋ですな
いたゞきの雪もあをあを煮えさうです
まあパンをおあがりなさい
いったいこゝをどういふわけで
国立公園候補地に
みんなが運動せんですか
いや可能性
それは充分ありますよ
もちろん山ぜんたいです
うしろの方の火口湖 温泉 もちろんですな
鞍掛山もむろんです
ぜんたい鞍掛山はです
Ur-Iwateとでも申すべく
大地獄よりまだ前の
大きな火口のへりですからな
さうしてこゝは特に地獄にこしらえる
愛嬌たっぷり東洋風にやるですな
鎗のかたちの赤い柵
枯木を凄くあしらひまして
あちこち花を植えますな
花といってもなんですな
きちがひなすびまむしさう
それから黒いとりかぶとなど、
とにかく悪くやることですな
さうして置いて、
世界中から集った
猾いやつらや悪どいやつの
頭をみんな剃ってやり
あちこち石で門を組む
死出の山路のほととぎす
三途の川のかちわたし
六道の辻
えんまの庁から胎内くぐり
はだしでぐるぐるひっぱりまはし
ぞれで罪障消滅として
天国行きのにせ免状を売りつける
しまひはそこの三つ森山で
交響楽をやりますな
第一楽章 アレグロブリオははねるがごとく
第二楽章 アンダンテ やゝうなるがごとく
第三楽章 なげくがごとく
第四楽章 死の気持ち
よくあるとほりはじめは大へんかなしくて
それからだんだん歓喜になって
最后は山のこっちの方へ
野砲を二門かくして置いて
電気でずどんと実弾をやる
Aワンだなと思ったときは
もうほんものの三途の川へ行ってるですな
ところがこゝで豫習をつんでゐますから
誰もすこしもまごつかない またわたくしもまごつかない
さあパンをおあがりなさい
向ふの山は七時雨
陶器に描いた藍の絵で
あいつがつまり背景ですな

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

三三七
     黒人技師の鎔岩流に対する意見
                    一九二五、五、一一、

どうですか この熔岩流は
殺風景なもんですなあ
噴き出してから二百何年たつさうですが
かう日が照ると空気の渦がぎらぎらたって
いたゞきの雪もあをあを煮えるやう
まるで大きな鍋ですな
まあパンをおあがりなさい
いったいこゝを
県か国かでなぜ公園にせんですかなあァ
えゝえ もちろん山も入れましてです
火口湖 温泉 もちろんですな
さうしてこゝは特に地獄にこしらえる
愛嬌たっぷり東洋風にやるですな
何せ向ふに極楽野てのがありますからな
(一行不明)
鎗のかたちの鉄索に
枯木をあちこちあしらひまして
岩にも少し朱をつかひ
それから花を植えますな
(一行不明)
きちがひなすびまむしさう
それから黒いとりかぶとです
さうして置いて世界中から集った
猾るいやつらや悪どいやつらの
頭をみんな剃ってやり
死出の山から三途の川
えんまの庁から胎内くぐり
針の山だの棘ケ原
はだしでぐるぐるひっぱりまはし
ぞれで罪障消滅として
天国行きのにせ免状を売りつける
しまひはそこの三つ森山で
オーケストラをやりますな
第一楽章 アレグロブリオははねるがごとく
第二楽章 アンダンテ やゝうなるがごとく
第三楽章 なげくがごとく
第四楽章 死の気持ち
法則通りはじめは大へんかなしくて
それからだんだん歓喜になって
最后は山のこっちの方へ
野砲を二門かくして置いて
電気でずどんと実弾をやる
Aワンだなと思ったときは
もうほんものの三途の川へ行ってるですな
さあパンをおあがりなさい
誰もすこしもまごつかない
さあパンをおあがりなさい
向ふの山は七時雨
陶器に描いた藍の絵ですな
あいつがつまり背景です
は(以下不明)
(一行不明)
(一行不明)

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲後)
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三三七
     黒人技師の鎔岩流に対する意見
                    一九二五、五、一一、

どうですか この熔岩流は
殺風景なもんですなあ
噴き出してから二百何年たつさうですが
かう日が照ると空気の渦がぎらぎらたって
いたゞきの雪もあをあを煮えるやう
まるで大きな鍋ですな
まあパンをおあがりなさい
いったいこゝを
県か国かでなぜ公園にせんですかなあ
えゝえ、もちろん山も入れましてです
さうしてこゝは特に地獄にこしらえる
こゝはわたしがやりたいです
鎗のかたちの鉄柵に
枯木をあちこちあしらひまして
岩にも少し朱をつかひ
さうして花を植えますな
花はトリトマまんじゅしゃげ
きちがひなすびとまむしさう
それから黒いとりかぶとです
さうして置いて世界中から集まった
猾るいやつらや悪どいやつの頭をみんな剃ってやり
死出の山から三途の川
えんまの庁から胎内潜り
針の山だの棘ヶ原だの
はだしでぐるぐるひっぱりまはし
それで罪障消滅として
天国行きのにせ免状を売りつける
しまひはそこの三つ森山で
オーケストラをやりますな
第一楽章アレグロブリオははねるがごとく
第二楽章アンダンテ やゝうなるがごとき
第三楽章なげくがごとき
第四楽章死の気持ち
法則通りはじめは大へんかなしくて
それからだんだん歓喜になって
最后は山のこっちの方へ
野砲を二門かくして置いて
電気でずどんと実弾をやる
G1だなと思ったときは
ほんものの三途の川へ行ってるですな
ところがこゝで予習をつんでゐますから
誰も少しもまごつかない
さあパンをおあがりなさい
向ふの山は七時雨
陶器に描いた藍の絵ですな
あいつがつまり背景です
ははは

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
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三三七
     鎔岩流
                    一九二五、五、一一、

どうですか この熔岩流は
殺風景なもんですなあ
噴き出してから二百何年たつさうですが
かう日が照ると空気の渦がぎらぎらたって
いたゞきの雪もあをあを煮えるやう
まるで大きな鍋ですな
いったいこゝを
県か国かでなぜ公園にせんですかなあ
えゝえ、もちろん山も入れましてです
薬師岳から鬼ヶ城
向ふのあのまっ青な火口湖に
網張小岩井もちろんですな
さうしてこゝは特に地獄にこしらえる
何せ向ふに極楽野てのがありますからな
えゝえゝこゝはわたしがひとつやりたいですな
鎗のかたちの鉄柵に
枯木をあちこち扱いまして
岩にも少し黒とセピヤと朱をつかひ
世界中から集まった
猾るいやつらや悪どいやつを
死出の山から三途の川
えんまの庁から胎内潜り
針の山だの棘の原だの
はだしでぐるぐるひっぱりまはし
それで罪障消滅として
天国行きのにせ免状を売りつける
しまひはあすこの三つ森山で
オーケストラをやりますな
第一楽章アレグロブリオははねるがごとく
第二楽章アンダンテやゝうなるがごとき
第三楽章なげくがごとき
第四楽章死の気持ち
はじめは大へんかなしくて
それからだんだん歓喜になって
最后は山のこっちの方へ
野砲を二門かくして置いて
電気でずどんと実弾をやる
G1だなと思ったときは
ほんものの三途の川へ行ってるですな
さあパンをおあがりなさい
向ふの山は七時雨
陶器に描いた藍の絵ですな
あいつがつまり背景です
ははは

------------------------------------------------------------
(下書稿1断片)
------------------------------------------------------------

三三七
     鎔岩流
                    一九二五、五、一一、

かげらふが鎔岩いちめん沸いてゐる
いたゞきの雪もぐらぐら煮えてるやうだ
白樺の気のゆれるのは
(以下空白)

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-〔文語詩稿未定稿(073)〕----------------------------------
------------------------------------------------------------
■「〔棕櫚の葉やゝに痙攣し〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

     〔棕櫚の葉やゝに痙攣し〕

棕櫚の葉やゝに痙攣し
陽光横目に過ぐるころ
湯屋には声のほのかにて
どぶ水はほとと落ちたるに
放蕩無頼の息子の大工
このとき古きスコットランドの
貴族風して戻り来れり

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

棕櫚の葉やゝに痙攣し
陽光横目に過ぐるころ
息子の大工は
古スコットランドの
貴族風して戻り来れり

------------------------------------------------------------
(下書稿1「東京」ノート47頁)
------------------------------------------------------------

棕櫚の葉大きく痙攣し
陽光横目に過ぐるころ
息子の大工は
古スコットランドの
貴族風して戻り来れり

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今日は「雛祭り」私自身も含め、男の子ばかりだった我が家には
関係なかったのですが、孫に女の子ができて様子が変わりました。

 甘いお菓子の大好きな姫ももうすぐ三歳、この春から保育園に兄
といっしょに行けるようになりました。

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