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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第983号--2017.12.23------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(36)」「国柱会」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「氷質の冗談」「森林軌道」
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 今回は1925年1月18日の日付をもつ「氷質の冗談」と、1月25日
の「森林軌道」の2篇です。

 「氷質の冗談」の方は学校の職員室で、雪のために見通しが効か
なくなった様子が、砂漠の中に来たようだとしています。

 「そこらはいちめん氷凍された砂けむり」なので、「氷質の冗談」
なのでしょう。

 この詩は雑誌『銅鑼』に1928年に掲載されています。

「森林軌道」は最初の題が「フレスコ」で、元々は「寒冷なフレス
コ絵」と書かれ、すぐに「フレスコ」に変更されています。

 絵画的な表現を目指したものでしょうか。雪の岩手山を描いたも
のです。

 後に「森林軌道」と題名が変るのは、その風景の中に森林軌道が
印象的にあったからだと思います。

 当時、岩手山近辺には、雫石駅を中心として、いくつかの森林軌
道が存在していました。

 これは普通の鉄道とは違い、山から木材を運び出すためのもので
す。

 「四番のとろ」というのは何だろうと考えていましたが、どうも
トロッコのことのようです。木材を載せたトロッコが難義をしてい
るということでしょう。

 厳しい雪に閉ざされた中でも、木材を運び続ける森林軌道…とい
う絵なんだと思います。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

営林署柳沢森林軌道線(岩手県)
http://www.cafe-dragoon.net/trip/rosen/rinyo_line/yanagisawa_line/index.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 現在の岩手県滝沢村はかつては林業が盛んで、現在の厨川駅裏側
(西側)に貯木場が置かれ、そこを起点として現在の岩手県滝沢村
柳沢地区まで森林軌道線が引かれ、切り出した木材の運搬が行われ
ていました。

 路線名の正式名称が不明でしたので、便宜上「柳沢森林軌道線」
としておきました。廃止時期は不明ですが、昭和20年代と思われま
す。現在では路線跡は道路に転用されたりして目立った遺構はほと
んど残っていません。

 1939(昭和14)年に現在の国土地理院が発行した地形図には「林
用軌道」として描かれています。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

葛根田川森林鉄道・廃線探訪その1
https://blogs.yahoo.co.jp/tophamhat6539/59688983.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 皆さんは、岩手県雫石町に昭和初期から約25年間、奥羽山系から
木材を搬出するため森林鉄道が南北に延びていた事をご存知だろう
か?

 当時、雫石町には青森営林局雫石営林署が管理する鶯宿林用軌道
本線、鶯宿林用軌道南畑大倉沢線、葛根田川林用軌道線の三路線の
森林鉄道が走っていたそうで、概ね昭和30年代には全線廃止になっ
たという。

 何れも貯木場があった雫石駅裏南口を基点に、鶯宿林用軌道本線
は現在の南畑小学校付近で分岐して、鶯宿ダム上流を遡りインクラ
インで峠を越え沢内村(現 西和賀町)まで約30km。鶯宿林用軌
道南畑大倉沢線は南畑小学校で分岐した後、現在のレン滝ダム付近
まで約20km。葛根田川林用軌道線は玄武洞を経て、岩手山麓の滝
ノ上温泉付近まで約20kmをそれぞれ運行していたとのこと。

 その中でも今回は、比較的平野部を通っていた「葛根田川森林鉄
道(林用軌道)」の廃線跡を辿ってみた。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(036)〕----------------------------------

「氷質の冗談」「森林軌道」

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■「氷質の冗談」
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(本文=下書稿2推敲後)
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四〇一
     氷質の冗談
                    一九二五、一、一八、

職員諸兄 学校がもう砂漠のなかに来てますぞ
杉の林がペルシャなつめに変ってしまひ
はたけも藪もなくなって
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生 北緯三十九度辺まで
アラビア魔神が出て来ますのに
大本山からはなんにもお振れがなかったのですか
さっきわれわれが教室から帰ったときは
そこらは賑やかな空気の祭
青くかゞやく天の椀から
ねむや鵝鳥の花も胸毛も降ってゐました
それからあなたが進度表などお綴ぢになり
わたくしが火をたきつけてゐたそのひまに
あの妖質のみづうみが
ぎらぎらひかってよどんだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしがあなたの方の管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に乗せて
あのほのじろくあえかな霧のイリデスセンス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな虚像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商連のなかまに入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
世界の辛苦を一杯につめ
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶん それは強力な竜にかはって
地球一めんはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃台にろ頂部だけをてかてか剃って
九条のけさをかけて立ち
二人の侍者に香炉と白い百合の花とをさゝげさせ
空を仰いでごくおもむろに
竜をなだめる二行の迦陀をつくります
いやごらんなさい
たうたう新聞記者がやってきました

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

四〇一
     氷質の冗談
                    一九二五、一、一八、

職員諸兄 学校がもう砂漠のなかに来てますぞ
杉の林がペルシャなつめに変ってしまひ
雪の花壇も藪もはたけもみななくなって
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生 北緯三十九度あたりまで
アラビア辺の生な魔神が出て来ますのに
大本山からはなんにもお振れがなかったのですか
さっきわれわれが教室から帰ったときは
そこらは賑やかな空気の祭
青くかゞやく天の椀から
ねむや鵝鳥の花も胸毛も降ってゐました
それからあなたが進度表などお綴ぢになり
わたくしが火をたきつけてゐたそのひまに
あの妖質のみづうみが
ぎらぎらひかってよどんだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしがあなたの方の管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に乗せて
あのほのじろくあえかな霧のイリデスセンス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな巨像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商連のなかまに入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
世界のごみを一杯につめ
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶん それは強力な竜にかはって
地球一めんはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃台で
二人の侍者に香炉と白い百合の花とをさゝげさせ
空を仰いでごくおもむろに
竜をなだめる二行の迦陀をつくります
いやごらんなさい
たうたう新聞記者がやってきました

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(雑誌『銅鑼』掲載形 1928年2月1日))
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     氷質のジョウ談

職員諸兄 学校がもうサマルカンドに移つてますぞ
杉の林がペルシヤなつめに変つてしまひ
花壇も藪もはたけもみんな喪くなつて
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生北緯三十九度あたりまで
アラビア魔神がはたらくことになつたのに
大本山からなんにもお振れがなかつたのですか
さつきわれわれが教室から帰つたときは
そこらは賑やかな空気の祭
青くかがやく密教風の天の椀から
ねむや鵞鳥の花も胸毛も降つてゐました
それがいまみな あの高さまで昇華して
ぎらぎらひかつて澱んだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしが管長ならば
こんなときこそ布教師がたを
みんな巨きな駱駝に乗せて
あのほのじろく甘い氷霧のイリデスセンス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ巨きな虚像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商連の仲間に入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
氷のコロナと世界の痛苦をいつぱいに詰め
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶんそれは強力なイリドスミンの竜に変つて
地球一ぱいはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃閣で
二人の侍者に香炉と白い百合の花とを捧げさせ
空を仰いでごくおもむろに
二行の迦陀をつくります
いや 新聞記者がやつてきました
                      宮沢賢治

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(下書稿1推敲後)
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四〇一
     氷質の冗談
                    一九二五、一、一八、

職員諸兄 学校がもう魔術をかけてしまはれました
まるでおかしな砂漠のなかに来てゐるのです
杉の林がペルシャなつめに変ってしまひ
雪の花壇も藪もはたけもみな喪くなって
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生 北緯三十九度あたりまで
アラビア魔神がはたらくことになったのに
大本山からはなんにもお振れがなかったですか
さっきわれわれが教室から帰ったときは
そこらは賑やかな空気の祭
青くかゞやく天の椀から
ねむや鵝鳥の花も胸毛も降ってゐました
それからあなたが古い帳簿を二冊綴ぢ
わたくしが火をたきつけてゐたそのひまに
この妖質のみづうみが
ぎらぎらひかってよどんだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしがあなたの宗の管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に載せて
あのほのじろくあえかな霧のイリデスセンス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな虚像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商たちの仲間に入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
世界の痛苦を一杯につめ
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶんそれは強力なイリドスミンの竜に変って
世界一ぱいはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃台で
二人の侍者に香炉と白い百合の花とを捧げさせ
空を仰いでごくおもむろに
竜をなだめる二行の迦陀を作ります
 いや、ごらんなさいたうたう新聞記者がやってきました

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

四〇一
     氷質の冗談
                    一九二五、一、一八、

職員諸兄 学校がもうサマルカンドに移ってますぞ
杉の林がペルシャなつめに変ってしまひ
花壇も藪もはたけもみんな喪くなって
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生 北緯三十九度あたりまで
アラビア魔神がはたらくことになったのに
大本山からはなんにもお振れがなかったですか
さっきわれわれが教室から帰りましたときは
そこらは賑やかな空気の祭といふふうに
ねむや鵝(数字不明)降ってゐました
それがいま(以下不明)
(一行不明))
ぎらぎらひかって澱んだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしが管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に載せて
あのほのじろい霧のイリデスセンスのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな虚像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商たちの仲間に入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
氷のコロナや世界の痛苦を一杯につめ
極地の海に沈めることを命じます
そしたらたぶんそれは強力なイリドスミンの竜に変って
世界一ぱいはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の大本山の玻璃台で
童子に香と百合の花とを捧げさせ
空を仰いでごくおもむろに
二行の迦陀を作ります
新聞記者がやってきた

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■「森林軌道」
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(本文=定稿推敲後)
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四〇七
     森林軌道
                     一九二五、一、二五、

岩手火山が巨きな氷霧の套をつけて
そのいたゞきを陰気な亜鉛の粉にうづめ
裾に岱赭の落葉松の方林を
林道白く連結すれば
そこから寒い負性の雪が
小松の黒い金米糖を
野原いちめん散点する
   ……川の音から風の音から
     とろがかすかにひびいてくる……
南はうるむ雪ぐもを
盛岡の市は沈んで見えず
三つ森山の西半分に
雑木がぼうとくすぶって
のこりが鈍いぶりきいろ
   ……鎔岩流の刻みの上に
     二つの鬼語が横行する……
いきなり一すじ
吹雪フキが螺旋に舞ひあがり
つづいて一すじまた立てば
いまはもう野はら一ぱい
あっちもこっちも
空気に孔があいたやう
巌稜も一斉に噴く
   ……四番のとろは
     ひどく難儀をしてゐるらしく
     音も却って遠くへ行った……
一つの雲の欠け目から
白い光が斜めに射し
山は灰より巨きくて
林もはんぶんけむりに陥ちる
   ……鳥はさっきから一生けん命
     吹雪の柱を縫ひながら
     風の高みに叫んでゐた……

------------------------------------------------------------
(定稿推敲前)
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四〇七
     森林軌道
                     一九二五、一、二五、

岩手火山が巨きな氷霧の套をつけて
そのいたゞきを陰気な亜鉛の粉にうづめ
裾に岱赭の落葉松の方林を
林道白く連結すれば
そこから寒い負性の雪が
小松の黒い金米糖を
野原いちめん散点する
   ……川の音から風の音から
     とろがかすかにひびいてくる……
南はうるむ雪ぐもを
盛岡の市は沈んで見えず
三つ森山の西半分に
雑木がぼうとくすぶって
のこりは鈍いぶりきいろ
   ……鎔岩流の刻みの上に
     二つの鬼語が横行する……
いきなり一すじ
吹雪フキが螺旋に舞ひあがり
つづいて一すじまた立てば
いまはもう野はら一ぱい
あっちもこっちも
空気に孔があいたやう
巌稜も湯気を噴く噴く
   ……四番のとろは
     崖のあたりでひどく難儀をしてゐるらしく
     音も却って遠くへ行ったやう……
一つの雲の欠け目から
白い光が斜めに射し
山は灰より巨きくて
林もはんぶんけむりのなかに陥ちる
   ……鳥はさっきから一生けん命
     吹雪の柱を縫ひながら
     風の高みに叫んでゐた……

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(下書稿3推敲後)
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四〇七
     森林軌道二
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングで
裾は岱赭のからまつばやし
それから寒い負性の雪が
小松の黒い金米糖を
そこらいちめん散点する
  ……山の奥から四番のとろが
    もうごろごろと鳴ってくる……
南は暗い雪雲を
盛岡の市は沈んで見えず
三つ森山の西半分に
雑木が黒くくすぶれば
のこりは鈍いブリキいろ
   (鎔岩流の刻みの上で
    二つの風が結婚する)
吹雪が一すじ光ってのぼり
続いて一すじまた立てば
鳥は一生けん命
風と吹雪の柱とを縫って叫んでゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

四〇七
     間伐見張り
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングで
裾は岱赭のからまつばやし
それから寒い負性の雪が
軌道の鉄をわづかに残し
崖の上までひろがって
小松の黒い金米糖を
そこいちめん散点する
  ……山の奥から四番のとろが
    もうごろごろと鳴ってくる……
南の暗い雪雲を
盛岡の市は沈んで見えず
またライラックのエプロンに
山羊の乳とるその人の
ほのかな声も聞えて来ず
三つ森山の西半分に
雑木が黒くくすぶれば
のこりは鈍いブリキぼたんで飾られる
   (鎔岩流の刻みの上で
    二つの風が結婚する)
吹雪が一すじ光ってのぼり
続いて一すじまた立てば
鳥は一生けん命
そこらを縫って叫んでゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

四〇七
     フレスコ
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングで、裾は岱赭のからまつばやし
それから寒い負性の雪と 小松の黒い斑点スペックの群金米糖が
いちめんばらばら
  ……とろがごろごろ鳴ってくる……
三つ森山には雑木が植り 残りは変なブリキ釦で飾られる
   (鎔岩流の刻みの中で
    風が苹果と結婚する)
吹雪が一すじひかってのぼり
続いて一すじまた立てば
鳥は一生けん命そこらを縫って叫んでゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
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四〇七
     フレスコ
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングででき、裾は岱赭のからまつば
やし
それから寒い負性の雪の展がりに 小松の黒い金米糖が
いちめんばらばら散点する
  ……奥の方からとろがごろごろ鳴ってゐる
    わたしは軌道を避けてゐやう……
凍った雲とまばゆくかすむ日の下で
三つ森山は雑木を泛べ 残りは変なブリキの釦で飾られる
   (あすこのまっ黒な鎔岩流の刻みの中で
    熱した風が黄いろの苹果と結婚した)
いきなり吹雪がひかってのぼり
鳥はもうさっきから
一生けん命そこらをのつめたい潮水のなかで叫んでゐる
たうたうとろがやって来た
赤や黄いろの荒縞を着て
みんな鯡の漁場のやうだ
胴切りされた巨きな楢をつけてゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後)
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四〇七
     森林軌道
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングで
裾は岱赭のからまつばやし
それからあとは負性の雪のひろがりで
小松の黒い金米糖が
いちめんばらばらちらばってゐる
  ……ごろごろとろが鳴ってくる……
  ……とろがごろごろ鳴ってゐる
    わたしは軌道を避けてゐやう……
凍った雲と
まばゆくかすむ日の下で
三つ森の半分には雑木が植り
残りのは白いブリキの釦で飾られる
  ……そこのまっくろな鎔岩流の刻鏤のなかで
    熱した風が黄いろの苹果と結婚した……
吹雪がいきなりひかって騰り
鳥はピッピッピッピ
一生けん命そこらを縫って、
つめたい潮水のなかで叫んでゐる
    もうやってきた
    赤や黄いろの荒縞を着て
    誰もみんな海賊風だ
    胴切りされた巨きな楢をつけてゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

四〇七
     フレスコ
                     一九二五、一、二五、

岩手火山がほとんど白いプディングででき
三つ森の半分には雑木が植り
残りの半分銀の釦で飾られる
相もかはらず上は凍った乱雲と
まばゆくかすむ日輪盤
吹雪は移り
もうさっきから
鳥はピッピッピッピ
一生けん命そこらを縫ってつめたいガラスのなかで叫んでゐる
  ……鎔岩流刻鏤のなかで
    風が苹果と結婚した……

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-〔文語詩稿未定稿(063)〕----------------------------------
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■「国柱会」
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(本文=下書稿推敲後)
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     国柱会

外の面には春日うららに
ありとあるひびきなせるを
灰いろのこの 館には
百の人 けはひだになし

台の上 桜はなさき
行楽の 士女さゞめかん
この館はひえびえとして
泉石を うち繞りたり

大居士は 眼をいたみ
はや三月 人の見るなく
智応氏はのどをいたつき
巾巻きて廊に按ぜり

崖下にまた笛鳴りて
東へと とゞろき行くは
北国の春の光を
百里経て汽車の着きけん

------------------------------------------------------------
(下書稿推敲前)
------------------------------------------------------------

     国柱会

外の面には春日うららに
ありとあるひびきなせるを
灰いろのこの 館には
百の人 けはひだになし

台の上 桜はなさき
行楽の 士女さゞめかん
この館はひえびえとして
泉石を うち繞りたり

大居士は 眼をいたみ
はや三月 人の見るなく
智応氏はのどをいたつき
巾巻きて廊に按ぜり

崖下に笛うち鳴りて
東へと とゞろき行くは
北国の春の光を
百里経て汽車の着きけん

--〔後記〕--------------------------------------------------

 文語詩の「国柱会」は上野にあった国柱会館をうたったものです。
「北国の春の光を/百里経て汽車の着きけん」はまた賢治の乗った
汽車でもあったと思います。この詩を賢治が晩年に国柱会から離れ
ていた証拠という人がいますが、間違いだと思います。

 手術した左眼も落ち着いてきましたが、バランスが悪くて困って
います。以前に買ってあった「度数を調節できるメガネ」が、左右
別々に調整できるので、無理やり合わせて使っていますが、両眼で
きちんとした画像にはならないですね。あと3週間ほどの辛抱です。

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