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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第978号--2017.11.18------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(31)」「盛岡中学校」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「〔うとうとするとひやりとくる〕」
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 今回は1924年10月26日の「〔うとうとするとひやりとくる〕」で
す。

 賢治の詩のなかでも、ちょっと変ったもので、本当に天狗問答み
たいなことをやっています。下書稿も多く、いろいろと変転の跡が
たどれます。

 一番最初の題名は「柏林のピクニック」という、ちょっと間延び
しかものでしたが、その後「初冬幻想」「霜林幻想」と変わってい
き、最後は題名がなくなっています。

 賢治の詩はいろいろと変わっていっても、最後まで変わらないと
ころがあるのが普通ですが、この詩では最後のところです。

(冠毛燈! ドラモンド光!)

 何のことだかわからない文句ですが、とにかくこの部分が最初か
ら最後まであります。

 ドラモンド光というのは、下の引用にもあるように、ライムライ
トのことだそうです。今でいうスポットライトですね。

 柏林の中で二人が問答しているのですが、この詩ではいつもの賢
治とトシという組み合わせではなく、ヒトかどうかもあやしい感じ
です。

 山猫のレストランにいた子分みたいな影の存在の声が聞こえてき
たということなのでしょうか。

 それから、小さなことなんですが、こんな詩句が途中に出てきま
す。

鯨肉人賞せず

 賢治の時代、鯨肉は日本人の食卓には上がっていなかったことが
わかります。普通に食べるようになったのは、戦後、学校給食がは
じまってからなんですね。

 でも、海の牧場で何を飼うかと問われて、「鯨」と即答するあた
り、さすが宮沢先生というところです。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

■ライムライト(limelight)
http://blog.goo.ne.jp/slide_271828/e/9f94e8bbd01a905a6263ffeaa032c62a

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ライムライトと言えばまず思い出すのはチャップリンの映画「ラ
イムライト」でしょう。またライムは柑橘類のライム(Citrus aura
ntifolia)を意味するので、何で光と関係があるかと不思議に思い
ます。実は英語のlimeには二つ意味があって、一つは柑橘類のそれ、
もう一つのlimeは石灰です。

 1800年代の劇場では石灰を酸素と水素のバーナーで熱して、この
固体から出る明るい光が照明として使われていました。ライムライ
トが使われなくなってもこの言葉は残り「スポットライトを浴びる」
という意味に使われています。チャップリンの映画の題名はこの意
味で使われているのです。

 ライムライトを灯すには石灰を高熱のバーナーで熱すれば良いの
です。私の知り合いはホタテの貝殻を使い、ブタンガスのバーナー
でライムライトを楽しんでいます。新鮮な貝殻はやや臭うそうです。
私の工場を見回すと高熱源はアセチレンバーナーがあります。鋼材
の切断はいつものことです。炭酸カルシウムはチョークです。

 チョークを万力に咥えてアセチレンで熱してみました。カルシウ
ムの炎色反応はオレンジ色で、もっと温度を上げていくと白く輝き
出します。遠目でも眩しいくらいです。

 チョークは字を書くために調製されているので多孔質で柔らかい。
それで20秒もアセチレンの炎に曝されると随分やせてしまいました。
そしてこのチョークは生石灰になっているでしょう。水を垂らせば
分かります。

 生石灰(CaO)の融点は2,572℃、沸点は2,850℃です。ライムライ
トが白色で光る理由は、2000℃を超えても溶けずに固体のままでい
られるから、となります。鉄では溶けてしまいますね。コールマン
ランタンのマントルの材質は何でしょうかね?

 どんな物体でも、溶けたり蒸発しなければ、その物体の温度に従
った波長の光を出します。ある温度が与えられた時、光の波長はあ
る分布をなします。放射エネルギーの極大値は温度が高くなるに従
って波長が小さい方に移動します。(ウィーンの変位則)これを理
論的に明らかにすることが19世紀末の物理学者の大きな課題でした。
量子力学の始まりです。

 石灰を熱すると強い白色光を出すことを発見したのは英国人の
Goldsworthy Gurney (1793-1875)です。彼はなかなか多才な人で医
者・化学者・建築家などなど、英国伝統のアマチュア科学者なので
す。英国の好事家(アマチュア)にはロバート・ボイルやヘンリー・
キャヴェンディッシュなど科学史に名を残す人も多いのです。

 彼は酸素+水素のトーチを発明して何でも高温の炎で炙ったに違
いありません。そして石灰も試してみたのでしょうね。1820年代の
ことです。

 1825年、マイケル・ファラデーのデモンストレーションを見たス
コットランドの技術者Thomas Drummond (1797--1840)は「これは使
える!」と閃いたのです。

 劇場で使えるモデルを開発したのは彼で、Drummond Light(ドラ
モンド光)とも呼ばれるのです。

 最初にライムライトが使われたのはロンドンのコベントガーデン
だと伝えられています。石油ランプに比べて明るいライムライトに
当時の人々は感動したでしょう。しかし酸素と水素を混合して燃や
すのですから事故も多かったに違いありません。1870年代に白熱電
灯が発明されるとその役割を終えました。

 スミソニアン博物館にはライムライトが保存されていて、その写
真を見ることが出来ます。ヴィクトリア期の機器は美しく仕上げら
れているので感心してしまいます。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(031)〕----------------------------------

「〔うとうとするとひやりとくる〕」

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■「〔うとうとするとひやりとくる〕」
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(本文=下書稿5推敲後)
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三三〇
     〔うとうとするとひやりとくる〕
                   一九二四、一〇、二六、

(うとうとするとひやりとくる)
(かげらふがみな横なぎですよ)
(斧劈皺雪置く山となりにけりだ)
(大人昨夜熟睡せしや)
ヤーとや云はんナインとやいはん)
(夜半の雹雷知りたまへるや)
(雷をば覚らず喃語は聴けり)
(何でせうメチール入りの葡萄酒もって
 寅松宵に行ったでせう)
(おまけにちゃんと徳利へ入れて
 ほやほや燗をつけてゐた
 だがメチルではなかったやうだ)
(いやアルコールを獣医とかから
 何十ぺん買ふさうです
 寅松なかなかやりますからな)
(湧水にでも行ったゞらうか)
(柏のかげに寝てますよ)
(しかし午前はよくうごいたぞ
 標石十も埋めたからな)
(寅松どうも何ですよ
 ひとみ黄いろのくわしめなんて
 ぼくらが毎日云ったので
 刺戟を受けたらしいんです)
(そいつはちょっとどうだらう)
(もっともゲルベアウゲの方も
 いっぺん身売りにきまったとこを
 やっとああしてゐるさうですが)
(あんまり馬が廉いもなあ)
(ばあさんもゆふべきのこを焼いて
 ぼくにはいろいろ口説いたですよ
 何ぼ何食っておがったからって
 あんまりむごいはなしだなんて)
(でも寅松へ嫁るんだらう)
(さあ寅松へどうですか
 野馬をわざと畑へ入れて
 放牧主へ文句をつけたことなどを
 ばあさん云ってゐましたからね)
(それでは嫁る気もないんだな)
(キャベヂの湯煮にも飽きましたなあ)
(都にこそは待ちたまふらん)
(それはこっちのことでせう
 ご機嫌いかゞとあったでせう)
(安息す鈴蘭の蓐だ)
(さあそれはその蓐古びて黄なりです)
(山嶺既にト々)
(天蓋朱黄燃ゆるは如何)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(誰か王位を微風に承けん)
(アダヂオは弦にはじまる)
(柏影霜葉喃語を棄てず)
(冠毛燈! ドラモンド光!)

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(下書稿5推敲前)
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三三〇
                   一九二四、一〇、二六、

(うとうとするとひやっとくる)
(かげらふがみな横なぎだもね)
(大人昨夜安眠ありや)
ヤーとや云はんナインとやいはん)
(夜半の雹雷知りたまへるや)
(雷をば覚らず喃語は聴けり)
(ははあ酋松メチール入りの葡萄酒もって
 あなたの室へも入ったでせう)
(とても強くて渋いんだ
 おまけに酣をつけてゐた)
(酋松とてもやりますよ
 首にはうこんのきれなど巻いて)
(そこらの枯草くさに寝てゐるぞ
 ちゃんとテープと時計をもって)
(柏の音できこえませんよ)
(尊公何をか義憤をなせる)
(瞳黄いろのかのくわし
 ひとたび身売りのとこなりしなり)
(蒼天ひとり何ぞ耿々)
(それを炉ばたのあの眼の赤いばあさんが
 何ぼ何食っておがったからって
 あんまりむごいはなしだと
 親類中を毎日泣いて話して
 やっとどうにかしたさうです)
(どうもずゐぶんせわしくなった
 けれどもまづは祝して可なりだ)
(ぼくはまた昨晩炉ばたに祝し
 老婆はきのこを炙りて饗す
 然も何ぞや酋松のやつ
 大盗奪はず小盗奪ふ)
(盗をし云はゞみなこれ盗)
(之を明日の組織に俟つ)
(過大にあらずば期待も可なり)
(大人熱意甚だ足らず)
(清福はあり鈴蘭の蓐)
(その蓐すでに古びて黄なり)
(この時山嶺既にト々)
(天蓋朱黄燃ゆるは如何)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(王位を風に承けしは誰ぞ)
(アダヂオは弦にはじまる)
(風に鉱質の二色性あり)
(冠毛燈! ドラモンド光!)

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(下書稿4推敲後)
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三三〇
                   一九二四、一〇、二六、

(よしそんならこんどは天狗問答で行かう)
(何をか辞せん)
(鈴蘭馬喰まず
 その実卯眼に似たり
 鈴蘭更に繁を加ふ
 牧人之を如何せん)
(以て即ち蓐として座す)
(その蓐すでに古びて黄なり)
(一月の銀 六月の芳)
(頭上の天蓋朱黄燃えなんとして如何)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(風の王位に即くものは誰ぞ)
(adagio は弦にはじまる)
(風に鉱質の二色性あり)
(冠毛燈! ドラモンド燈!)

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(下書稿4推敲前)
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三三〇
                   一九二四、一〇、二六、

(よしそんならこんどは天狗問答で行かう)
(何をか辞せん)
(鈴蘭馬喰まず
 その実兎眼に似たり
 牧野これに仍て窮す
 救治それ如何)
(牧を廢して園となす)
(園多きを加ふ
 これ即ち不祥なるを如何)
(海を以て牧をなす)
(何の獣かよく海に育す)
(鯨)
(鯨肉人賞せず
 鯨乳人見るなし)
(育種之を改む)
(爾徒に妄語を玩びて
 以て大人を翻らうす
 看よ看よ
 爾が頭上天蓋既に燃えたり)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(風の王位に即くものは誰ぞ)
(adagio は弦にはじまる)
(風に鉱質の二色性あり)
(冠毛燈! ドラモンド燈!)

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(下書稿3)
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三三〇
     霜林幻想
                   一九二四、一〇、二六、

……いゝか、この野原から抜け出してはだめだぞ
……いゝとも さあ出した……
……発句の方はきみがやれ……
……ずるいぞ。よし、
……霜いくたび兎の糞も枯れにけり
……あたまから不調法だな えゝと
……また、演習の沙汰ぞあるらん
……山葡萄人にしられず渡し了へて……
……なんだ野原から出たんでないか
……あすこは立派に裾野のうちさ
……さうかでは母はあやぶむ朝の麦ふみか……
……かうなるとあの部落を抜け難いな斧劈皺雪置く山となりにけり……
……うこんのきれをのどに巻くらん
……御料地のさきだち二日たのまれて
……あはれはかなき虫とわれかな
……どうもどこかで聞いたやうだぞ……
……類句はあるかもしれん……
……下の句に類句だなんてあるもんか古今集かな……
……ははあ……
……まあいゝ柏の樹おなかさかさと鳴りそめて
……おとめは遠く去りにけるかな
  おいおい何だそれは
……何でもない 続けただけさ
……本気でないな
  おとめは遠くなりてけるかな
  まるで暁烏さんの歌だ
  てけるかなとはなんだ
  まあいゝ えゝと
  泉川どろの木の葉の落ちちりて
……それはとにかく世のさわがしさ
  たうたう六たう三略を出したな
  立派に落城だらう
  さあ、引導をわたして破っちまへ
……きみが渡せ……
……いゝとも
  きみは負けたんだから小僧だ
  いま案文を作るからなえゝと
……柏林の中にゐると
  まるで昔の西域のお寺へ行ったやうだ
  かねをたゝけ かねを
  よしもういゝか がんもんもんもんもんもんもんもんもん
  天朗れて影明なり霜葉林
  情炎洗ひつくして風凛々
  うやうやしく惟るに新帰元
  新派月並はいかい居士霊位
  それ月天は浄明の幡を連亘し
  斧劈皺下に雪爛燦たりと雖も
  柏樹律なく黄原に点ずれば
  十方無韻蒼亦蒼
  どらどら
  じゃんぼんじゃんぼんじゃんぼー
  汗が出るなきみの引導をきいてると
  きみの下の句こそ何だ、
……よしそんならこんどは天狗問答で行かう
……何をか辞せん
……鈴蘭実は熟れて兎眼に似たり
……野蓐既に古びて黄なるを如何
……雲は被って白し五月は萌して青し
……汝の頭上天蓋をかく朱黄の諸宝燃えなんとして如何
……爪哇の僭王胡瓜を啖ふ
……風の王位に即くものは誰ぞ
……adagio は弦にはじまる
……風に鉱質の二色性あり
……冠毛燈! ドラモンド燈!

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(下書稿2推敲後)
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三三〇
     霜林幻想
                   一九二四、一〇、二六、

……いゝか
  周天は連亘す浄明の幡
……無律!
……柏樹律なく黄原に点ず
……無韻!
……十方無韻詩を為る 安息の午
……妄!
……妄りに霜葉を踏んで帰還を忘る
……それではこんどはおれが出す
  天晴れて影明なり霜葉林
……月並!
……月並なんてどうして漢詩へ入れられる
……恐れ入ったか
……何が恐れ入るもんか 暴評だ
……では譲歩して 俗!
……俗塵洗ひ尽す風凛々
……風凛々 あっはっはっは
……漫罵却って通し枯草の原
……枯草の原 わっはっはっは
……仮に一嘲を加へて更に閑森
……全篇よろよろ!
……おい風凛々といふのは何がおかしい
……おかしいな
……枯草の原といふのは何がおかしい
……とにかくおかしいな
……よし そんならこんどは天狗問答で行かう
……何をか辞せん
……鈴蘭実は熟れて兎眼に似たり
  野蓐既に古びて黄なるを如何
……雲は被って白し五月は萌して青し
……汝の頭上天蓋をかく
  朱黄の諸宝燃えなんとして如何
……爪哇の僭王胡瓜を啖ふ
……風の王位に即くものは誰ぞ
……adagio は弦にはじまる
……風に鉱質の二色性あり
……冠毛燈! ドラモンド燈!

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(下書稿2推敲前)
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三三〇
     初冬幻想
                   一九二四、一〇、二六、

……いゝか
  周天は連亘す浄明の幡
……無律!
……無律林上日は燦々
……無韻!
……十方無韻蒼亦蒼
……妄!
……妄りに霜葉を踏んで帰還を忘る
……それではこんどはおれが出す
  天晴れて影明なり霜樹林
……月並!
……月並なんてどうして漢詩へ入れられる
……恐れ入ったか
……何が恐れ入るもんか 暴評だ
……では譲歩して 俗!
……俗塵洗ひ尽す風凛々
……風凛々 あっはっはっは
……漫罵却って通し枯草の原
……枯草の原 わっはっはっは
……更に一嘲を加へて更に閑森
……全篇よろよろ!
……おい風凛々といふのは何がおかしい
……おかしいな
……枯草の原といふのは何がおかしい
……とにかくおかしいな
……よし そんならこんどは天狗問答で行かう
……何をか辞せん
……鈴蘭実は熟れて兎眼に似たり
  野蓐既に古びて黄なるを如何
……雲は被って白し五月は萌して青し
……諸宝の天蓋将に燃えなんとして如何
……爪哇の僭王胡瓜を啖ふ
……風の王位に即くものは誰ぞ
……adagio は弦にはじまる
……風に鉱質の二色性あり
……冠毛燈! ドラモンド燈!

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(下書稿1推敲後)
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三三〇
     初冬幻想
                   一九二四、一〇、二六、

(いゝか、周天は連亘す浄明の幡)
(無韻!)
(十方無韻蒼亦蒼)
(堕す!)
(遊人誤て堕す炎樹林)
(妄!)
(妄りに霜葉を踏んで帰還を忘る)
(参った、こんどはおれが出すぞ
 天朗れて影明なり霜葉林)
(月並!)
(月並なんて漢詩へ入れられるか)
(参ったか)
(何が参るもんか きさまの方が悪いんだ)
(さうかそれでは譲歩して 俗!)
(俗塵洗ひ尽す水精の風)
(水精の風 あっはっはっは)
(漫罵却て遠し枯草の原)
(枯草の原 わっはっはっは)
(更に一嘲を加へて寂更に寂)
(全篇よろよろ!)
(おい、水精の風といふのは何がおかしい)
(おかしいな)
(枯草の原といふのは何がおかしい)
(とにかく おかしいな)
(よし,そんならこんどは天狗問答で行かう)
(何でも来いだ)
(鈴蘭実は熟して兎眼に似たり
 野蓐既に古びて黄なるを如何)
(雪は被って白し五月は萌して青し)
(諸宝の天蓋将に燃えなんとして如何)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(風の王位に即くものは誰ぞ)
(adagio は絃にはじまる)
(風に鉱質の二色性あり
(冠毛燈! ドラモンド光)

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(下書稿1推敲前)
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三三〇
     柏林のピクニック
                   一九二四、一〇、二六、

(いゝか、周天は連亘す浄明の幡)
(無韻!)
(十方無韻蒼亦蒼)
(堕す!)
(遊人誤て堕す炎樹林)
(妄!)
(妄りに霜葉を踏んで帰還を忘る)
(参った、こんどはおれが出すぞ
 天朗れて影明なり霜葉林)
(月並!)
(月並なんて漢詩へ入れられるか)
(参ったか)
(何が参るもんか きさまの方が悪いんだ)
(さうかそれでは譲歩して 俗!)
(俗塵洗ひ尽す水精の風)
(水精の風 あっはっはっは)
(故無くして人は笑ふ枯草の上)
(枯草の上 わっはっはっは)
(更に一嘲を加へて空更に寂)
(全篇よろよろ!)
(おい、水精の風といふのは何がおかしい)
(おかしいな)
(枯草の上といふのは何がおかしい)
(とにかく おかしいな)
(よし,そんならこんどは天狗問答で行かう)
(何でも来いだ)
(鈴蘭実は熟して兎眼に似たり
 野蓐既に古びて黄なるを如何)
(雪は被って白し五月は萌して青し)
(諸宝の天蓋将に燃えなんとして如何)
(爪哇の僭王胡瓜を啖ふ)
(風の王位に即くものは誰ぞ)
(adagio は絃にはじまる)
(風に石油の二色性あり
(冠毛燈! ドラモンド光)

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-〔文語詩稿未定稿(058)〕----------------------------------
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■「盛岡中学校」
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(本文=下書稿2推敲後)
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     盛岡中学校

木柵に注ぐさ霧と
れる桐のいくもと

白堊城秋のガラスは
ひらごとにうつろなりけり

一鐘のラッパが鳴りて
急ぎ行く港先生

気乗りせぬフットボールを
村久のさびしく立てる

------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

     盛岡中学校

さ霧する白の木柵
れる桐のいくもと

白堊城秋のガラスは
ひらごとにうつろなりけり

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(下書稿1推敲後)
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     校庭

さ霧する白き木柵
幹彫れる桐のいくもと

剥げそめし白きペンキの
木柵に人人は倚り、
そのペンキあるいは剥げ
あるものは庭をのぞめり

一鐘のラッパが鳴りて、
急ぎ行く 港先生、
白堊城 秋のガラスは、
ひらごとにうつろなりけり、

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(下書稿1推敲前)
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    桐下倶楽部

うら寒きさ霧のなかに
気乗りせぬフットボールや
幹彫れる 桐のま下に
村久の さびしく立てり

剥げそめし 白きペンキの
木柵に人人は倚り、
朝方の フットボールを、
さびしくもまもるなりけり

一鐘のラッパが鳴りて、
急ぎ行く 港先生、
白堊城 秋のガラスは、
ひらごとにうつろなりけり、

たゞ白きそらのま下に
桐の枝うごくともなく
村久はなほもさびしく
校庭を見まもりて立つ

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今回の文語詩は、原稿が二つあり、校本全集では「校庭」の方が
本文でしたが、新校本全集から「盛岡中学校」に変わっています。

 盛岡中学校は新制高校になって、盛岡第一高校として岩手大学の
すぐそばにあります。

 盛岡はしばらく行っていませんが、花巻の方にもしばらく行けそ
うにないので、当分は懐かしむばかりです。

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