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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第976号--2017.11.04------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(29)」「〔青びかる天弧のはてに〕」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」「善鬼呪禁」
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 今回は1924年10月5日、前回の「産業組合青年会」と同じ日付を
もつ「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」と同じく11日の
「善鬼呪琴」です。

 「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」は下書稿の段階では
「業の花びら」という題で、以前はこの名でしられていたものです。

 残念ながら定稿には題名が記されていないので、一行目を仮題と
していますが、やはり「業の花びら」の方がふさわしい題名だと思
います。

 「産業組合青年会」の帰り、鷺の鳴く沼地を通りながら、「5は
げしく寒く」震えていますが、その原因が「神々の名を録した」せ
いだというのは「祀られざるも神には神の身土がある」と云った前
作と大いに関係がありそうです。

 最終的にはふるえている場面までしか記されていませんが、下書
稿では

億の巨匠が並んで生れ
しかも互ひに相犯さない
明るい世界はかならず来る

 という印象的な詩句が書かれています。これは「生徒諸君に寄せ
る」などにも出てくる考えですね。

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ
 
新しい時代のコペルニクスよ
余りに重苦しい重力の法則から
この銀河系を解き放て

衝動のやうにさへ行われる
すべての農業労働を
冷く透明な解析によって
その藍いろの影といっしょに
舞踏の範囲にまで高めよ

新たな時代のマルクスよ
これらの盲目な衝動から動く世界を
素晴らしく美しい構成に変へよ

新しい時代のダーヴヰンよ
更に東洋風静観のキャレンジャーに載って
銀河系空間の外にも至り
透明に深く正しい地史と
増訂された生物学をわれらに示せ
おほよそ統計に従はば
諸君のなかには少なくとも千人の天才がなければならぬ
素質ある諸君はただにこれらを刻み出すべきである

 初めて「宮沢賢治詩集」を読んだときは、『春と修羅』の絢爛豪
華な世界よりも、こういう中学生っぽい考えに感動したものでした。
(中学生でしたので)

 しかし現実世界で賢治はこういう考えを持ちながら、「はげしく
寒く」ふるえていたのです。

 もう一つの「善鬼呪禁」も有名な詩です。この詩は「過労呪禁」
という題で生前発表されています。

 ここで印象的なのは

どうせみんなの穫れない歳を
逆に旱魃でみのった稲だ

という詩句です。これは「日照りに不作なし」の本質をついていて、
たまたま水の便がよくて十分な水さえ確保できれば、干ばつは逆に
豊作をもたらします。

 ここで描写されている農民の田は、うまく水を確保して儲けたわ
けです。

 西国では早くから発達したため池や灌漑設備が、東北では遅れて
いて、ダムや灌漑水路が整備されたのは賢治死後ずいぶん経ってか
らだったと思います。

 そういう灌漑設備のおかげで、賢治の頃には大問題だった旱害が
なくなったのは、賢治の夢の一つがかなったということです。

 おかげで今や「日照りに不作なし」と信じられていて、「雨ニモ
マケズ」に「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」の「ヒデリ」を「ヒ
ドリ」と誤記されている問題でも、「ナミダヲナガス」理由がわか
らなくなっています。

 「日照りに不作なし」だから、ヒデリで困るはずがない、という
のですね。

 この詩は旱害の年に書かれています。

 「日照りに不作なし」が一面真実でありながら、儲けた農民はそ
の他大多数の農民からは恨まれるよ、という忠告なんだと思います。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

業の花びら 詩群
http://www.ihatov.cc/series/karma.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 かつて吉本隆明氏が、「三一四 〔夜の湿気と風がさびしくいり
まじり〕(旧題「業の花びら」)」を評して、「且つてこのやうな
詩を作った人もなく、又このやうなすさまじい諦念を体認した人も
ありません。彼の苦悩には近代的なニヒリズムの浅薄さと安価さが
ありません」と述べました。

 ほんとうにこの詩は、「四一一 未来圏からの影」などとともに、
『春と修羅 第二集』の世界における、極北を感じさせる作品です。

 「三一三 産業組合青年会」と、この「〔夜の湿気と風がさびし
くいりまじり〕」は、最終形態を見るかぎりでは、一見なんの関連
もない作品のように思われます。

 しかしたとえば、前者の「下書稿(二)第一形態」と、後者の「下
書稿(二)手入れ」を較べていただくと、これらの二作品が、じつは
共通の想念から枝分かれしてきたことがわかると思います。

 この両者の下書稿の上では、「祀られざるも神には神の身土があ
る…」という謎のような言葉と、「億の巨匠(天才)が並んで生れ
…」というフレーズが、何度も反響して現れては、推敲過程で消さ
れるということが、繰り返されているのです。

 また、「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕(下書稿(一)手
入れ)」の欄外書き込みを見ていただくと、これが童話「ポラーノ
の広場」とも、密接に関連していることがわかります。「つめくさ
のあかり」さえ出てきます。

 いっぽう、「ポラーノの広場」の推敲過程においては、レオーノ
キューストの発言として次のような言葉が記入されて、後でまた削
除されています。

 「さうだ、諸君、あたらしい時代はもう来たのだ。この野原のな
かにまもなく千人の天才がいっしょにお互いに尊敬し合ひながらめ
いめいの仕事をやって行くだらう。」

 これはまさに、上の二つの作品の草稿に繰り返しあらわれる、
「億の巨匠(天才)が並んで生れ/しかも互ひに相犯さない/明る
い世界はかならず来る」というフレーズと、正確に対応するもので
す。

 すなわち、童話「ポラーノの広場」も、この「業の花びら 詩群」
と、深くつながった作品なのです。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(029)〕----------------------------------

「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」「善鬼呪禁」

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■「〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕」
------------------------------------------------------------
(本文=定稿)
------------------------------------------------------------

三一四
     〔夜の湿気と風がさびしくいりまじり〕
                      一九二四、十、五、

夜の湿気と風がさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
そらには暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる

------------------------------------------------------------
(下書稿4推敲後)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気と風がさびしくいりまじり
松とやなぎの林はくろく
そらには暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる
あざけるやうに知らないやうに
さぎが遠くで鳴いてゐる
その偶然な二っつが
黄いろな芒で結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり雲にうつったりする

------------------------------------------------------------
(下書稿4推敲前)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気と風がさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
そらには暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる

それ(一字不明)まさしく(約三字不明)
 ののちは
一つの古い(約九字不明)る
  ……遠くでさぎが鳴いてゐる……
松並木から雫がふり
そらのはるかな高みでは
風もごうごう吹いてゐて
わづかのさびしい星群が
雲から洗ひ出されては
その偶然な二っつが
黄いろな芒で結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり雲にうつったりする

------------------------------------------------------------

※下書稿3から二枚の紙片を切り出して貼り付け、その後推敲して
いる。

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気が風とさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
空には暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる
ああ誰か来てわたくしに云へ
億の巨匠が並んで生れ
しかも互ひに相犯さない
明るい世界はかならず来ると
 どこかでさぎが鳴いてゐる
  ……遠くで鷺が鳴いてゐる
    夜どほし赤い眼を燃して
    つめたい沼に立ち通すのか……
松並木から雫がふり
わづかのさびしい星群が
西で雲から洗はれて
その二っつが
黄いろな芒を結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり白くうごいたりする

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気が風とさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
空には暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる
  ……遠くで鷺が鳴いてゐる
    夜どほし赤い眼を燃して
    つめたい沼に立ってゐるのか……
松並木から雫がふり
わづかばかりの星群が
西で雲から洗はれて
その偶然な二っつが
黄いろな芒で結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり白くうつったりする

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気と風がさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく、
そらには暗い業の花びらがいっぱいで、
わたくしは神々の名を録したことから、
はげしく寒くふるえてゐる、

  ……遠くでさぎが鳴いてゐる……

松並木から雫がふり
空のどこかを
風もごうごう吹いてゐて
わづかのさびしい星群が
西で雲から洗ひおとされて
その偶然な二っつが
黄いろなのげで結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり雲にうつったりする

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

三一四
     業の花びら
                      一九二四、十、五、

夜の湿気とむねけがさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
そらには暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる
ああたれか来てわたくしを抱け

   しかもいったい
   たれがわたくしにあてにならうか
どんなことが起らうと
わたくしはだまってあるいて行くだけだ

  ……どこかでさぎが鳴いてゐる……

松並木から雫がふり
空のずゐぶん高いところを
風がごうごう吹いてゐる
わづかのさびしい星群が
西で雲から洗ひ出されて
その偶然な二っつが
真鍮ブラスな芒で結んだり
巨きな秋の草穂の影が
残りの雲にうつったりする

------------------------------------------------------------
(下書稿1追加書込)
------------------------------------------------------------

菩提皮のマントや縄を結び
いちにちいっぱいの労働に
からだを投げて
みんなといっしょに行くといっても
そのときわれわれには
一つの暗い死が
来るだけだ
あの重くくらい層積雲のそこで北上山地の一つの稜を砕き
まっしろな石灰岩抹の億噸を得て
幾万年の脱滷から異常にあせたこの洪積の台地に与へつめくさの白
いあかりもともし
はんや高萱の波をひらめかすと云っても
それを実行に移したときに
ここらの暗い経済は
恐らく微動もしないだらう
落葉松から夏を冴え冴えとし
銀ドロの梢から雲や風景を乱し
まっ青な稲沼の夜を強力の電燈とひまはりの花から照射させ鬼げし
を燃し(二字分空白)をしても
それらが楽しくあるためにあまりに世界は歪んでゐる

------------------------------------------------------------
■「善鬼呪禁」
------------------------------------------------------------
(本文=定稿)
------------------------------------------------------------

三一七
     善鬼呪禁
                    一九二四、一〇、一一、

なんぼあしたは木炭すみを荷馬車に山に積み
くらいうちから町へ出かけて行くたって
こんな月夜の夜なかすぎ
稲をがさがさ高いところにかけたりなんかしてゐると
あんな遠くのうす墨いろの野原まで
葉擦れの音も聞こえてゐたし
どこからどんな苦情が来ないもんでもない
だいいちそうら
そうら あんなに
苗代の水がおはぐろみたいに黒くなり
畦に植はった大豆まめもどしどし行列するし
十三日のけぶった月のあかりには
十字になった白い暈さへあらはれて
空も魚の眼球めだまに変り
いづれあんまり録でもないことが
いくらもいくらも起ってくる
おまへは底びかりする北ぞらの
天河石アマゾンストンのところなんぞにうかびあがって
風をまくらふ野原の慾とふたりづれ
威張って稲をかけてるけれど
おまへのだいじな女房は
地べたでつかれて酸乳みたいにやはくなり
口をすぼめてよろよろしながら
丸太のさきに稲束をつけては
もひとつもひとつおまへへ送り届けてゐる
どうせみんなの穫れない歳を
逆に旱魃ひでりでみのった稲だ
もういゝ加減区劃りをつけてはねおりて
鳥が渡りをはじめるまで
ぐっすり睡るとしたらどうだ

------------------------------------------------------------
(下書稿2)
------------------------------------------------------------

三一七
     善鬼呪禁
                    一九二四、一〇、一一、

なんぼあしたは木炭すみを荷馬車に山に積み
くらいうちから町へ出かけて行くたって
こんな月夜の夜なかすぎ
稲をがさがさ高いところにかけたりなんかしてゐると
あんな遠くのうす墨いろの野原まで
葉擦れの音も聞こえてゐたし
どこからどんな苦情が来ないもんでもない
だいいちそうら
そうら あんなに
苗代の水がおはぐろみたいに黒くなり
くろに植はった大豆まめもどしどし行列するし
十三日のけぶった月のまはりには
十字になった白い暈さへあらはれて
空も魚の眼球めだまに変り
いづれあんまり録でもないことが
いくらもいくらも起ってくる
おまへは底びかりする北ぞらの
天河石アマゾンストンのところなんぞにうかびあがって
風をま喰ふ野原の慾とふたりづれ
威張って稲をかけてるけれど
おまへのだいじな女房は
下でつかれて酸乳みたいにやわくなり
口をすぼめてよろよろしながら
丸太のさきに稲束をつけては
もひとつもひとつおまへへ送り届けてゐる
どうせみんなの穫れないときに
逆に旱魃ひでりでみのった稲だ
もういゝ加減区りをつけてはねおりて
鳥が渡りをはじめるまで
ぐっすり睡るとしたらどうだ

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後)
------------------------------------------------------------

三一七
     過労呪禁
                    一九二四、一〇、一一、

なんぼあしたは木炭を荷馬車に山に積み
くらいうちから町へ出かけて行くたって
こんな月夜の夜なかすぎ
稲をがさがさ高いところにかけたりなんかしてゐると
あんな遠くのうす墨いろの野原まで
葉擦れの音も聞こえてゐたし
どこからどんな苦情が来ないもんでない
おまけにそうら
そうらあんなに
苗代の水がおはぐろみたいに黒くなり
畦に植はった大豆まめはどしどし行列するし
十三日のけぶった月のまはりには
十字になった白い暈さへあらはれて
空も魚の眼球に変り
いづれあんまり録でもないことが
いくらもいくらも起ってくる
おまへは底びかりする北ぞらの
天河石アマゾンストンのところなんぞにうかびあがって
風をま喰ふ野原の慾とふたりづれ
威張って稲をかけてるけれど
おまへのだいじな女房は
下でつかれて酸乳みたいにやわくなり
口をすぼめてよろよろしながら
丸太のさきに稲束をつけては
もひとつもひとつおまへへ送り届けてゐる
どうせみんなのとれないときに
ぎゃく旱魃ひでりでみのった稲だ
もういゝ加減区劃りをつけてはねおりて
あいつを抱いてやったらどうだ

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

三一七
     過労呪禁
                    一九二四、一〇、一一、

なんぼあしたは木炭を荷馬車に山に積み
くらいうちから町へ出かけて行くたって
こんな月夜の夜なかすぎ
稲をがさがさ高いところにかけたりなんかしてゐると
  ……ずゐぶん遠くの原までも
    葉擦れの音は聞こえるもんだ……
そうら あんなに
苗代の水がおはぐろみたいに黒くなり
畦に植はった大豆まめはどしどし行列するし
十三日のけぶった月のまはりには
十字になった白い暈さへあらはれて
空も魚の眼球に変り
いづれあんまり録でもないことが
いくらもいくらも起ってくる
おまへは底びかりする北ぞらの
天河石アマゾンストンのところなんぞにうかびあがって
風をま喰ふ野原の慾とふたりづれ
威張って稲をかけてるけれど
おまへのだいじな女房は
下でつかれて乳酸みたいにやわくなり
口をすぼめてよろよろしながら
丸太のさきに稲束をつけては
もひとつもひとつおまへへ送り届けてゐる
もういゝ加減区劃りをつけてはねおりて
そいつを抱いてやったらどうだ

------------------------------------------------------------
(雑誌「貌」発表形 1925年7月28日)
------------------------------------------------------------

     過労呪禁

なんぼあしたは木炭すみを荷馬車に山に積み
くらいうちから町へ出かけて行くたつて
こんな月夜の夜の夜なかすぎ
稲をがさがさ高い処にかけたりなんかしてゐると
 …ずゐぶん遠くの原までも
  葉擦れの音は聞こえるもんだ……
そうら あんなに
苗代の水がおはぐろみたいに黒くなり
畦に植はツた大豆まめはどしどし行列するし
十三日のけぶつた月のまはりには
十字になつた白い暈さへあらはれて
空も魚の眼球に変り
いづれあんまり碌でもないことが
いくらもいくらも起つてくる
おまへは底びかりする北空の
天河石アマゾンストンのところなんぞにうかびあがつて
風をまくらふ野原の慾とふたりづれ
威張つて稲をかけてるけれど
おまへのだいじな女房は
下でつかれて乳酸みたいにやはくなり
口をすぼめてよろよろしながら
丸太の先に稲束をつけては
もひとつもひとつおまへへ送り届けてゐる
もういゝ加減区劃くぎりをつけてはねりて
そいつを抱いてやつたらどうだ

------------------------------------------------------------
-〔文語詩稿未定稿(056)〕----------------------------------
------------------------------------------------------------
■「〔青びかる天弧のはてに〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿推敲後)
------------------------------------------------------------

     〔青びかる天弧のはてに〕

青びかる天弧のはてに
きらゝかに町はうかびて
六月のたつきのみちは
いまやはた尽きはてにけり

いさゝかの書籍とセロを
思ふまゝ(以下空白)

------------------------------------------------------------
(下書稿推敲前)
------------------------------------------------------------

青びかる天弧のはてに
きらゝかに町はうかびて

いさゝかの書籍と楽器
思ふまゝ(以下空白)

------------------------------------------------------------
(先駆形口語詩「金策」)
------------------------------------------------------------

一〇七七
     金策
                    一九二七、六、三〇、

青びかりする天弧のはてに
うつくしく町がうかんでゐる
かあいさうな町よ
金持とおもはれ
一文もなく
一文の収入もない
そしてうらまれる
辞職でござる
そこで世間といふものは
中間といふものをゆるさない
なにもかもみんないけない
悪口、反感、
一八や十九でおとなよりも貪慾なこども
なにもかもみんないけない
おれは今日はもう遊ばう
何もかも
みんな忘れてしまって
ひなたのなかのこどもにならう
甘く熟してぬるんだ風と
なにか小さなモーターの音
この花さいた(約三字空白)の樹だ
梢いっぱい蜂がとび
その膠質な影のなかを
月光いろの花辯がふり
向ふでは町がやっぱり
ひかってそらにうかんでゐる

--〔後記〕--------------------------------------------------

 孫の風邪がうつったのか、咳が止まらずに困っています。今週は
白血球が減少しているとかいう理由で、抗ガン剤投与も中止になり、
体調はよくありません。

 「春と修羅 第二集」もようやく「業の花びら」までたどりつき
ました。だいたい半分くらいまで来たかと思いますが1000号ま
でには終らないようです。この後「第三集」も掲載していく予定で
すが、どこまでやれるかはわかりません。

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