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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第971号--2017.09.30------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(24)」「〔われらひとしく丘に立ち〕」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「一八四 春」「一八四 「春」変奏曲」「一八四ノ変 春変奏曲」
------------------------------------------------------------

 先週は宮沢賢治学会の大会に行きましたが、そこでの研究発表で
非常に面白い話を聞きました。

 「銀河鉄道の夜」に関する木野陽さんの報告です。結論だけを簡
単に言うと、「銀河鉄道」は天球儀で現された、架空の大地の上を
走っている、というものです。それに対する私の感想は以下のよう
なものです。

 銀河鉄道が走る舞台は、今までは「星座早見表」に代表される、
地上から夜空を見上げた形で理解されることが多かったです。

 また、アニメ「銀河鉄道999」のように、広大な宇宙空間を駆
ける、星間を航行する列車(形は列車でも、実態は星間航空機)と
いうイメージも強いでしょうね。

 しかしこれは現代人の誤解で、鉄道であるからにはレールが必要
で、レールは当然大地の上に敷設されます。

 その大地は、現実の大地が地球儀の球の表面であるように、天球
儀の球の表面であるということです。銀河鉄道はここを走ります。
そしてこれが「幻想第四次」の正体だったのではないか、と思いま
す。

 言われてみれば納得で、どうして鉄道が大地の上を走るものであ
ることを忘れていたのか、と改めて思います。(この論証は物語の
内容に即して精密におこなわれていますが、省略しています。)

 天球の上を走る列車を描写するためには、その更に外側から俯瞰
する視点が必要になりますが、これが吉本隆明氏が言っていた、遠
いところからの視線にあたるものなのでしょう。

 定期大会で「銀河鉄道の夜」の話というと、今までは独りよがり
のトンデモな内容がほとんどでしたが、これは傾聴に値する新説で、
大いに支持したいと思います。

 木野陽さんは漫画の原作者だそうで、作品のテキストを画にする
にあたり、矛盾のない構図を追求していて、ここに至ったのだそう
です。プロの力量恐るべし、ですね。

 さて、今回は1924年8月22日の日付を持つ二篇とその「変」です。

 「春」と「「春」変奏曲」は同じ日付と作品番号で、内容も連作
といってよいものです。「184ノ変」という作品番号を持つ「春
変奏曲」は日付も1933年7月5日と変りますが、前作の笑いの止ま
らない少女が「ギルダちゃん」という名になり、戯曲風の作品にな
ります。

 1933年といえば賢治の最晩年です。死の床につきながら、10年近
く前のできごとを思い出しながら再構成していったものと考えられ
ます。

 8月の作品に「春」という題がついているのも変ですが、これを
最後に、春の賑やかさや夏の幻想は姿を消していき、メランコリー
な秋の作品に変わっていきます。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

■宮沢賢治『春と修羅』の「春」はどこからくるのかもしくは勅使
川原三郎『春と修羅』について
https://koshohirakiya.blogspot.jp/2016/06/blog-post_6.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 宮沢賢治はダンスしただろうか?

 しなかっただろう。盆踊りくらいはしたかもしれないが。若い頃
の賢治を知る人は、賢治は音楽好きだが音痴だったと証言している。
これはずいぶん親近感を覚える話である。

 『春と修羅』の中に、「原体剣舞連(はらたいけんばいれん)」
という詩があって、これは岩手県江刺市の原体というところに伝わ
る念仏踊りに取材したものだ。踊り手は伝統的に皆少年である。

 勅使川原三郎はずいぶん前に(と言っても、個人的にはほんのこ
のあいだのことに思えるのだが)『Dah‐dah‐sko‐dah‐dah』と
いう、この賢治の詩を題材にしたダンスを踊ったことがある。

 舞台を見たのはもちろんだが、それから少し経ってNHKの番組で
この剣舞についての番組があり、今は亡き大滝秀治の朗読をバック
にどこかの草原で勅使川原三郎が踊っている映像が流れたことがあ
る。今思うとビデオに撮っておけばよかった、と悔やまれてならな
い。

 先日、またアップデイトダンスへと勅使川原三郎と佐東梨穂子の
ダンスを見に行った。

 題材は賢治の『春と修羅』である。

 改めて見ると、このタイトルである「春」と「修羅」の取り合わ
せは奇妙な印象を受ける。修羅は阿修羅であり、無限に続く終わり
なき戦いを象徴する。「春」という穏やかな季節にはふさわしから
ぬように思える。しかし逆に、修羅は「生命力」を象徴するもので
もある。その修羅を「鬼」と見るならば、昔から春の農作物を祝福
する祭りに「鬼」はつきものであった。節分の鬼やらい(追儺)も
それと関わる、と折口信夫は『鬼の話』に書いている。

 ステージで始まった二人のダンスは、実に激しいものだった。

 それによって、賢治の詩(心象スケッチ)は生命力にあふれた激
しいものを持っている、ということが改めて観客に知らされる。

 佐東梨穂子の休むことなく回転する掌の動きからは、蠕虫舞手
(アンネリダ・タンツェーリン)の、「8(エイト)、γ(ガムマ
ー)、e(いー)6(シックス)、α(アルファ)」が思い浮かん
だ。

 途中、『春と修羅』の朗読が流れた。

 有名な序ではなく、『春と修羅』第二集の「春」であった。

 この第二集は、賢治の生前にほとんど出版の準備ができていたが、
賢治が費用の二十円を無産政党に寄付してしまい、果たせなくなっ
たというエピソードがある。それから一年と経たぬうち、賢治は死
んでしまった。

「修羅」のつかない、「春」と題された詩は不可思議な内容を持っている。

…………

 空気がぬるみ
 沼には鷺百合の花が咲いた
 むすめたちは
 みなつややかな黒髪をすべらかし
 あたらしい紺のペツティコートや
 また春らしい水いろの上着
 プラツトフオームの陸橋の段のところでは
 赤縞のずぼんをはいた老楽長が
 そらこんな工合だといふふうに
 楽譜を読んできかせてゐるし
 山脈はけむりになつてほのかにながれ
 鳥は燕麦のたねのやうに
 いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
 青い蛇はきれいなはねをひろげて 
 そらのひかりをとんで行く
 ワルツ第CZ号の列車は
 まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
 その白いかたちを見せていない

 …………

 さらに、『「春」変奏曲』という詩に続く。

 …………

 いろいろな花の爵やカツプ、
 それが厳しい蓋を開けて、
 青や黄いろの花粉を噴くと、
 そのあるものは
 片つぱしから沼に落ちて
 渦になつたり条になつたり
 ぎらぎら緑の葉をつき出した水ぎぼうしの株を
 あつちへこつちへ避けてしづかに滑つてゐる
 ところがプラットフォームにならんだむすめ
 そのうちひとりがいつまでたつても笑ひをやめず
 みんなが肩やせなかを叩き
 いろいろしてもどうしても笑ひやめず
(以下略)

(新修『宮沢賢治全集』第三巻より。仮名遣いもそれに準じました)

……………

 笑いやまないのは「ギルダちゃん」という女の子で、他の女の子
たちと一緒に駅で列車を待っている。笑いが止まらなくなったのは
星葉木の胞子のせいで、楽長さんのアドヴァイスでそれを吐き出し、
事なきを得る。そしてそこへ、ベーリング行XZ号が走ってくる。

 これは詩というよりも何かのファンタジーのような内容を持って
いて、晩年の賢治の「春」とはこのようにどこまでもふわふわとし
ていて、やってくるのは「鬼」ではなく「ワルツ第CZ号」や「ベー
リング行XZ号」という列車である。いや、やってくるものが何であ
れ、春来るものは生命力をそこへともたらす何かなのだ。現にこの
「春」の初稿は「ワルツCZ号列車」というタイトルだったという。
これはドヴォルザークの「Czech Waltz, Op. 54, No. 4」と関係す
るのだろうか?

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------


-〔春と修羅第二集(024)〕----------------------------------

「一八四 春」「一八四 「春」変奏曲」「一八四ノ変 春変奏曲」

------------------------------------------------------------
■「一八四 春」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2)
------------------------------------------------------------

一八四
     春
                    一九二四、八、二二、

空気がぬるみ
沼には鷺百合の花が咲いた
むすめたちは
みなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしい紺のペッティコートや
また春らしい水いろの上着
プラットホームの陸橋の段の所では
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふふうに
楽譜をよんできかせてゐるし
山脉はけむりになってほのかにながれ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後)
------------------------------------------------------------

一八四
     春
                    一九二四、八、二二、

空気がぬるみ、沼には鷺百合の花がさいた
むすめたちは、みなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしい紺のペッティコートや
また春らしい水いろの上着
プラットフォームの陸橋の段のところでは
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふふうに
楽譜をよんできかせてゐるし
山脉はけむりになってほのかにながれ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前)
------------------------------------------------------------

一八四
     春
                    一九二四、八、二二、

空気がぬるみ、沼には水百合の花がさいた
むすめたちは、みなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしく
また春らしい水いろの上着
プラットフォームの陸橋の段のところでは
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふふうに
楽譜をよんできかせてゐるし
山脉はけむりになってほのかにながれ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない

------------------------------------------------------------
(『銅鑼』掲載形)掲載誌「銅鑼」第八号(1926年10月)
------------------------------------------------------------

     ワルツ第CZ号列車

空気がぬるみ沼には水百合の花が咲いた
むすめ達はみなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしい紺のペツテイコートや
また春らしい水いろの上着
プラットホームの陸橋のところでは
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふ ふうで
楽譜をよんできかせてゐるし
山脈はけむりになつてほのかに流れ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない。
            (プレリュード)

------------------------------------------------------------
(『貌』掲載形)掲載誌「貌」第三号(1925年9月)
------------------------------------------------------------

     ワルツ第CZ号列車

空気がぬるみ沼には水百合の花が咲いた
むすめ達はみなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしい紺のペツテイコートや
また春らしい水いろの上着
プラットホームの陸橋のところでは
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふ ふうで
楽譜をよんできかせてゐるし
山脉はけむりになってほのかに流れ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号の列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない。

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■「一八四 「春」変奏曲」
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(本文=下書稿推敲後)
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一八四
     「春」変奏曲
                     一九二四、八、二二、

いろいろな花の爵やカップ、
それが厳めしい蓋を開けて、
青ろ黄いろの花粉を噴くと、
そのあるものは
片っぱしから沼に落ちて
渦になったり条になったり
ぎらぎら緑の葉をつき出した水ぎぼうしの株を
あっちへこっちへ避けてしづかに滑ってゐる
ところがプラットフォームにならんだむすめ
そのうちひとりがいつまでたっても笑ひをやめず
みんなが肩や背中を叩き
いろいろしてももうどうしても笑ひやめず

------------------------------------------------------------
(下書稿推敲前)
------------------------------------------------------------

一八四
     「春」変奏曲
                     一九二四、八、二二、

爵やカップ、
それが厳めしい蓋を開けて、
青ろ黄いろの花粉を噴くと、
そのあるものは首尾よく雌花の柱頭につき、
ごくゆっくりと花粉の管を出すのもあるけれども
もう大部分百億分の九を十ならべたくらゐのやつは
片っぱしから沼に落ちて
渦になったり条になったり
ぎらぎら緑の葉をつき出した水ぎぼうしの株を
あっちへこっちへ避けてながれる
ところがプラットフォームにならんだむすめ
ひとりがいつまでたっても笑ひをやめず
みんなが肩やせなかを叩き
いろいろしてももうどうしても笑ひやめず

------------------------------------------------------------
■「一八四ノ変 春 変奏曲」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿推敲後)
------------------------------------------------------------

一八四ノ変
      春 変奏曲
                     一九三三、七、五、

(ギルダちゃんたらいつまでそんなに笑ふのよ)
(あたし……やめやうとおも……ふんだけれど……)
(水を呑んだらいゝんぢゃあないの)
(誰かせなかをたゝくといゝわ)
(さっきのドラゴが何か悪気を吐いたのよ)
(眼がさきにおかしいの お口がさきにおかしいの?)
(そんなこときいたってしかたないわ)
(のどが……とっても……くすぐったい……の……)
(まあ大へんだわ あら楽長さんがやってきた)
(みんなこっちへかたまって 何かしたかい)
(ギルダちゃんとってもわらってひどいのよ)
(星葉木の胞子だらう
 のどをああんとしてごらん
 こっちの方はお日さまへ向いて
 さうさう おゝ桃いろのいゝのどだ
 やっぱりさうだ
 星……葉木の胞子だな
 つまり何だよ 星葉木の胞子にね
 四本の紐があるんだな
 そいつが息の出入のたんび
 湿気の加減がかはるんで、
 のどでのびたり、
 くるっと巻いたりするんだな
 誰かはんけちを、水でしぼってもっといで
 あっあっ沼の水ではだめだ、
 あすこでことこと云ってゐる
 タンクの脚でしぼっておいで
 ぜんたい星葉木なんか
 もう絶滅してゐる筈なんだが
 どこにいったいあるんだらう
 なんでも風の上だから
 あっちの方にはちがひないが)
  そっちの方には星葉木のかたちもなくて、
  手近に五本巨きなドロが
  かゞやかに日を分劃し
  わづかに風にゆれながら
  枝いっぱいに硫黄の粒を噴いてゐます
(先生、はんけち)
(ご苦労、ご苦労
 ではこれを口へあてゝ
 しづかに四五へん息をして さうさう
 えへんとひとつしてごらん
 もひとつえへん さう、どうだい)
(あゝ助かった
 先生どうもありがたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
   ベーリング行XZ号の列車は
   いま触媒の白金を噴いて
   線路に沿った黄きろな草地のカーペットを
   ぶすぶす黒く焼き込みながら
   梃々として走って来ます

------------------------------------------------------------
(下書稿推敲前)
------------------------------------------------------------

一八四ノ変
      春 変奏曲
                     一九三三、七、五、

(ギルダちゃんたらいつまでそんなに笑ふのよ)
(水を呑んだらいゝんぢゃあないの)
(誰かせなかをたゝくといゝわ)
(ねえギルダちゃん眼がさきにおかしいの お口がさきにおかしいの?)
(そんなこときいたってしかたないわ)
(のどが……とっても……くすぐったい……の……)
(まあ大へんだわ あら楽長さんがやってきた)
(みんなこっちへかたまって 何かしたかい)
(笑ひ病だわギルダちゃん)
(あゝそれか 星葉木の胞子だらう
 のどをああんとしてごらん
 おゝ桃いろのいゝのどだ
 やっぱりさうだ
 星……葉木の胞子だな
 まりをくくった四本の紐が
 呼気と吸気で湿気のちがふたび
 のどでのびたり、くるっと巻いたりするんだな
 誰かはんけちを、水でしぼってもっといで
 ぜんたい星葉木なんか
 もう絶滅してゐる筈なんだが
 居た居た、あすこに五本もあるぞ、
 風下なんだが、あゝさうか ゆふべは風が
 こっちへ吹いていまは向ふへ吹いてるか。)
 そこには五本星葉木がかゞやかに日を分配しぶつぶつ硫黄を吐い
てゐます
(先生、はんけち)
(あ、もってきたか、ご苦労、ご苦労
 ではこれを口へあてゝ
 しづかに四五へん息をして さうさう
 えへんとひとつしてごらん
 もひとつえへん さう、どうだい)
(あゝ助かった
 先生どうもありがたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
(さあ支度をして汽車が来たから)
   古風なエーテルの輝きを
   楔のやうに二つに割いて
   急行列車がやってきます

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-〔文語詩稿未定稿(051)〕----------------------------------
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■「〔われらひとしく丘に立ち〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿3推敲後)
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     〔われらひとしく丘に立ち〕

われらひとしく丘に立ち
青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなくのぞみけり
そは巨いなる塩の水
海とはおのもさとれども
伝へてきゝしそのものと
あまりにたがふこゝちして
たゞうつゝなるうすれ日に
そのわだつみの潮騒えの
うろこの国の波がしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

われらひとしく丘に立ち
青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなく見しかども
名を言はんさへ恐ろしく
げにうつゝともわかずして
そのわだつみの潮騒えの
うろこの国の波がしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき

------------------------------------------------------------
(下書稿2)
------------------------------------------------------------

われらひとしく丘に立ち
青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなく見しかども
名を言はんさへ畏ろしく
げにまぼろしとうつつともわかず
そのわだつみの潮の国のなみがしら
きほひ寄するをのぞみゐたりき

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲後=歌稿B短歌10の余白に記載)
------------------------------------------------------------

ひとしくわれら丘に立ち
げに青ぐろくしてぶちうてる
あやしきもののひろがりを
東はてなく見しかども
なみがしらきほひ寄するを
あやしみゐたり

------------------------------------------------------------
(下書稿1推敲前=歌稿B短歌10の余白に記載)
------------------------------------------------------------

われらそのとき山上に立ち
まぼろしとうつつともわかず
わだつみの潮の国の
なみがしらきほひ寄せ来るを
はじめて見たり

------------------------------------------------------------
(先行形短歌=歌稿B短歌10)
------------------------------------------------------------

まぼろしとうつつともわかずなみがしら
きほひ寄せ来るわだつみを見き。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 「一八四ノ変」の方は目次に漏れていましたので、「第二集」の
目次を変更しています。

 花巻から無事戻ってきましたが、来年は行けるかどうかわかりま
せん。

 このところ視力が落ちてきたということで眼科を受診しています
が、もしかすると白内障の手術を受けるかもしれません。

 ガンの方の行方もわからないのに、他を手術しても仕方なさそう
ですが、まだ当分は生きていることを前提にして手術を受けるのも
悪くなさそうで、医者も勧めてくれました。

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