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--宮沢賢治---Kenji-Review-----------------------------------
-----------------------------------第961号--2017.07.22------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「春と修羅第二集(14)」「〔雲を濾し〕」

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-〔話題〕---------------------------------------------------
「〔日脚がぼうとひろがれば〕」「〔ふたりおんなじさういふ奇体
な扮装で〕」
------------------------------------------------------------

 今回は「問題の」二篇です。この二つの詩は元々同じ下書稿から
出発していて、本来は最終形の「〔ふたりおんなじさういふ奇体な
扮装で〕」が掲載されて、その他は下書稿として扱われるところな
のですが、途中で「日付が変わって」います。

 具体的に言うと、下書稿3までは「1924年5月8日」ですが、下
書稿4から「1926年10月26日」になっています。

 下書稿3の段階で一度完成していたものを、更に推敲し、下書稿
4から定稿へと変化していきましたが、これは同じ年の秋のことか
もしれません。

 また、良く知られたこととして、これらの詩の一番最初の姿が、
有名な「曠原淑女」という詩であるということもあります。

 私の中学生のときの教科書には宮沢賢治の詩は「松の針」と「曠
原淑女」が掲載されていましたし、たいていの「賢治詩集」には採
用されていた、有名な詩です。

 現存の原稿では、下書稿1として、最初から完成された姿で現わ
れますので、「曠原淑女」に至るまでの下書稿は破棄されたものと
思われます。

 改めて各段階の姿を比べてみると、やはり「下書稿1」である、
「曠原淑女」が最も完成度が高く、優れたものと思いました。

 推敲過程ですが、下書稿1と2を「〔日脚がぼうとひろがれば〕」
の推敲過程とし、下書稿3の第一形態を同詩の本文としています。

 下書稿3への推敲から下書稿4、定稿までは「〔ふたりおんなじ
さういふ奇体な扮装で〕」の推敲過程としています。

 「校本全集」が出たときに、よく知っている詩が「なくなった」
ということがいくつもありましたが、「曠原淑女」はその代表的な
ものです。

 どうせ二篇、本文として出すなら、もう一つ、「曠原淑女」も別
の本文として掲載してほしかったと、今でも思います。

--〔BookMark〕----------------------------------------------

「〔日脚がぼうとひろがれば〕」
http://blog.livedoor.jp/harutoshura/archives/47245508.html

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 きょうは、「九三」の最後のところです。


赤い顔してわらってゐるのは狼(オイノ)沢
一年生の高橋は 北清事変の兵士のやうに
はすに包みをしょってゐる


 最後に、「にはとこ藪のかげから」きた「生徒」たちのことが描
かれています。

 花巻市に狼沢(おおかみざわ)という地区がありますが、この
「赤い顔してわらってゐる」生徒の名は「おいのさわ」というよう
です。

「北清事変」は義和団事件とも呼ばれる、中国、清末の1900年に起
こった排外的農民闘争のことです。山東省付近に清の中期から白蓮
教の分派で義和拳という秘密結社がありました。彼らは空手のよう
な拳術を習い、呪文を唱えると神通力を得て刀や鉄砲にも傷つかな
いと信じていたそうです。

 日清戦争(1894〜95)後、列強の侵略が中国を分割の危機にさら
し、安い商品の流入などで農民の生活は窮乏。とくに外国の勢力を
後ろ盾にして特権をもったキリスト教の布教は反感を買い、排外的
な機運が高まりました。

(略)

 清廷は動揺しますが、最終的に守旧派の指導下に義和団利用策を
とり、1900年6月、ついに列強に宣戦を布告しました。

(略)

 イギリス、ロシア、ドイツ、フランス、アメリカ、日本、イタリ
ア、オーストリアの8か国は連合軍をつくり、大沽砲台、天津で官
軍と義和団を破ります。西太后と光緒帝は西安に逃れ、失脚した守
旧派にかわって実権を握った洋務派は、連合軍に協力して義和団の
残部を虐殺しました。

 1901年には北京議定書が成立し、中国の植民地化がいっそう深ま
るとともに、膨大な賠償金の返済に苦しむことになります。

 ロシア、日本の2国が連合軍の主力でした。日本は「極東の憲兵」
として東アジア人民の民族解放運動を抑え込む武装化の道を歩むこ
とになり、義和団鎮圧を口実に全満州を軍事占領したロシアと対立。
日露戦争のきっかけともなります。

 「北清事変」が起こったとき賢治はまだ4歳。赤や黄色の布を身
に着けた農民を中心とした「北清事変の兵士」たちの姿を、本や雑
誌で見ていたのでしょうか。

 衣類や食糧などを詰めた包みを背中に斜めに背負っている姿を
「北清事変の兵士のやうに/はすに包みをしょってゐる」と表現し
たのでしょう。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

-〔春と修羅第二集(023)〕----------------------------------

「〔日脚がぼうとひろがれば〕」「〔ふたりおんなじさういふ奇体
な扮装で〕」

※この二編は同一作品の逐次変化における二段階であると考えられ
るが、日付を異にし、かつ、内容もかなり変化しているので、一応
別にして、本文に並掲することにした。

------------------------------------------------------------
■「〔日脚がぼうとひろがれば〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

九三
     〔日脚がぼうとひろがれば〕
                      一九二四、五、八、

日脚がぼうとひろがれば
つめたい西の風も吹き
黒くいでたつむすめが二人
接骨木藪をまはってくる
けらを着 縄で胸をしぼって
睡蓮の花のやうにわらひながら
ふたりがこっちへあるいてくる
その蓋のある小さな手桶は
けふははたけへのみ水を入れて来たのだ
ある日は青い蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝がこれより爽かなとき
町へ売りにも来たりする
赤い漆の小さな桶だ
けらがばさばさしているのに
瓶のかたちのモッペをはいて
おまけに鍬を二梃づつ
けらにしばってゐるものだから
何か奇妙な鳥踊りでもはじめさう
大陸からの季節の風は
続けて枯れた草を吹き
にはとこ藪のかげからは
こんどは生徒が四人来る
赤い顔してわらってゐるのはオイノ
一年生の高橋は 北清事変の兵士のやうに
はすに包みをしょってゐる

------------------------------------------------------------

下書稿3の推敲以降は「「〔ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で〕」
を参照

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

九三
                      一九二四、五、八、

日脚がぼうとひろがれば
つめたい西の風も吹き
黒くいでたつ村娘むすめが二人
接骨木藪をまはってくる
けらを着 縄で胸をしぼって
睡蓮の花のやうにわらひながら
ふたりがこっちへあるいてくる
その蓋のある小さな手桶は
けふははたけへのみ水を入れて来たのだ
ある日は青い蓴菜を入れ
欠けた巨きな椀を泛かべて
ある日は紅い菅草や
桔梗の花をいっぱい盛って
朝がこれより爽かなとき
町へ売りにも来たりする
赤い漆の小さな桶だ
けらにしばってゐるものだから
鳥の踊りフオーゲルダンツの舞手とも見える
そんなら風よおまへがステップ地方で歌ったやうに
今日はいちにち、
このひとたちのはたらくそばでふるえてくれ、
今日は一日風よたのしいおまへのことばを
この人たちにさゝやいてくれ

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

九三
                      一九二四、五、八、

日射しがぼうと渡ってくれば
つめたい西の風も吹き
接骨木藪のうしろから
二人の農婦ひとがのぼってくる
けらを着 粗い縄をまとって
星座やうにわらひながら
ゆっくりふたりがあるいてくる
その蓋のある小さな手桶は
けふははたけへのみ水を入れて来たのだ
ある日は青い蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝がまだ爽かなうちに
町へ売りにも来たりする
めいめい鍬を二梃づつ
けらにしばってゐるものだから
このひとたちは
鳥の踊りフオーゲルダンツの舞手に見える
風よおまへが中央亜細亜で顫えたとほり
もいちどここでふるえることができないか

------------------------------------------------------------
(下書稿1)
------------------------------------------------------------

九三
     曠原淑女
                      一九二四、五、八、

日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のおんながおぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
菅草の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋のついた小さな手桶は
今日ははたけへのみ水を入れて来たのだ
今日でない日は青いつるつるの蓴菜を入れ
欠けた朱塗の椀をうかべて
朝の爽かなうちに町へ売りにも来たりする
鍬を二梃たゞしくけらにしばりつけてゐるので
曠原の淑女たちよ
あなたがたはウクライナの
舞手のやうに見える
  ……風よたのしいおまへのことばを
    もっとはっきり
    この人たちにきこえるやうに云ってくれ……

------------------------------------------------------------
■「〔ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で〕」
------------------------------------------------------------
(本文=定稿)
------------------------------------------------------------

九三
     〔ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で〕
                    一九二四、一〇、二六、

ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で
はげしいかげらふの紐をほぐし
しづかにならんで接骨樹藪をまはってくれば
季節の風にさそはれて
わざわざここの台地の上へ
ステップ地方の鳥のをどり
それををどりに来たのかと
誰でもちょっとかんがへさう
けらがばさばさしてるのに
瓶のかたちのもんぺをはいて
めいめい鍬を二梃づつ
その刃を平らにせなかにあて
荷繩を胸に結ひますと
その柄は二枚の巨きな羽
かれ草もゆれ笹もゆれ
こんがらかった遠くの桑のはたけでは
けむりの青いLentoもながれ
崖の上ではこどもの凧の尾もひかる
そこをゆっくりまはるのは
もうどうしても鳥踊フォーゲルタンツ
大陸からの西風は
雪の長嶺を越えてきて
かげらふの紐をときどき消し
翡翠いろした天頂では
ひばりもじゅうじゅくじゅうじゅく鳴らす
そこをしづしづめぐるのは
どうもまことに鳥踊フォーゲルタンツ
そこらでぴったりとまるのも
やっぱりもって鳥踊り
しばらく顔を見合せながら
赤い手桶をはたけにおろし
天使のやうに向きあって
ビザンチンから近世まで
大へん古いポーズです
おやおや胸の縄をとく!
おひとりうしろへまはって行って
大じな羽をおろしてしまふ
そこからこちらが縄をとく
そちらが羽をおろしてあげる
けらをみがるにぬぎすてゝ
まゝごとみたいに座ってしまひ
髪をなでたり
ぽろっぽろっとおはなしなんどはじめれば
そこらあたりの茎ばっかしのキャベヂから
たゞもういちめんラムネのやうに
ごぼごぼと湧くかげらふばかり
鳥の踊りももうおしまひ

------------------------------------------------------------
(下書稿4推敲後)
------------------------------------------------------------
九三
                    一九二四、一〇、二六、

ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で
はげしいかげらふの紐をほぐし、
しづかにならんで接骨樹藪をまはってくれば、
季節の風にさそはれて、
わざわざここの台地の上へ
ステップ地方の巨鷲踊り
それををどりに来たのかと,
誰でもちょっとかんがへさう、
けらがばさばさしてるのに、
瓶のかたちのもっぺをはいて、
めいめい鍬を二梃づつ、
その刃を平らにせなかにあてゝ
荷繩を胸にひますと、
その柄は二枚の巨きな羽、
かれ草もゆれ笹もゆれ、
こんがらかった遠くの桑のはたけでは、
けむりの青いLentoもながれ、
崖の上ではこどもの凧の尾もひかる、
そこをゆっくりまはるのは
もうどうしても鳥踊フォーゲルタンツ
大陸からの西風は西嶺の雪を越えてきて、
かげらふの紐をときどき消し、
翡翠いろした頭の上で、
ひばりもじゅうじゅくじゅうじゅく鳴らす、
そこをしづしづめぐるのは
どうもまことに鳥踊
西では雪がぎらぎらひかり
東は雲ののろしがあがる
そこは大きな三角ばたけ
茎ばっかりのギャベヂから
たゞもういちめんラムネのやうに
ごぼごぼと湧くかげらふです

------------------------------------------------------------
(下書稿4推敲前)
------------------------------------------------------------
九三
                    一九二四、一〇、二六、

お二人しづかにつれだって
さういふ奇体な扮装で
はげしいかげらふの紐をほぐし
しづかにならんで接骨樹藪をまはってくれば
季節の風にさそはれて
わざわざここの台地の上へ
ステップ地方の鳥踊フォーゲルタンツ
それををどりに来たのかと
西洋人なら思ひさう
(農学校の先生が
どてのこっちにおかしな顔で立ってゐて
二人で畑へ出て行くと
何か手帳へかいてた)と
部落へ帰ってみんなへはなす
たしかにそれはぼくもつらい
けれどもぼくにしてみれば
いまごろやめてしまへない
あらゆる非難を敢然うけて
じっとそちらを見てゐます
けらがばさばさしてるのに
瓶のかたちのもっぺをはいて
めいめい鍬を二梃づつ
その刃を平らにせなかにあてゝ
(約九字不明)ぼれば
その柄は二枚の巨きな羽
鳥の(二字不明)のやうですよ
かれ草もゆれ笹もゆれ
こんがらかった遠くの桑のはたけでは
けむりの青いLentoもながれ
崖の上ではこどもの凧の尾もひかる
そこをゆっくりまはるのは
もうどうしても鳥踊フォーゲルタンツ
大陸からの西風は
かげらふの紐をときどき消し
にはとこ藪もしゅうしゅう吹けば
そらのひじゃうな高みでは
ひばりもじゅうじゅく鳴いてゐる
鳥の踊りの選手がた
もいちどそこをおまはりなさい
いけませんねえあなたがた
そこのところへとまっては

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲後2)
------------------------------------------------------------

お二人しづかにつれだって
さういふ奇体な扮装で
はげしいかげらふの紐をほぐし
しづかにならんで接骨樹藪をまはってくれば
季節の風にさそはれて
わざわざこゝの台地の上へ、
ステップ地方の鳥踊フォーゲルタンツ
それををどりに来たとしか、
いまのところは見えないしだい、
二人が畑へでて行くと
農学校の先生が
おかしな顔で立ってゐて
何か手帳に書いてたと
部落へ帰ってみんなへはなす
たしかにそれはぼくもつらい
けれどもぼくにしてみれば
いまごろやめてしまへない
あらゆる非難を敢然うけて
云ふことだけは云ひますよ
けらがばさばさしてるのに
瓶のかたちのもっぺをはいて
めいめい鍬を二梃づつ
その刃を平らにせなかにしばり
胸できっしり結べば
その柄はけして柄でなくてぱっと畳んだ羽の骨
断じて二枚の羽の骨
かれ草もゆれ笹もゆれ
こんがらかった遠くの桑のはたけでは
けむりの青いLentoもながれ
崖の上ではこどもの凧の尾もひかる
そこをゆっくりまはるのは
もうどうしても鳥踊りフォーゲルタンツ
大陸からの西風は、
かげらふの紐をときどき消し
にはとこ藪もしゅうしゅう吹けば
そらのひじゃうな高みでは
ひばりもじゅうじゅく鳴いてゐる
鳥の踊りの選手がたもいちどそこをおまはりなさい
なあんだたうたうとまって顔を見合わせて
赤い手桶をはたけにおろし
それからいっしょに向きあって
胸をしばった縄をとき大じの羽もおろしてしまふ
こんどはけらもはたけにしいて、
おはなしなんどしなさると
鳥の踊りももうおしまひ
けれどもこれからあなたがた
をどりによくにてちがったあれを一日やるのでせう

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲後1)
------------------------------------------------------------

九三
                      一九二四、五、八、

黒くいでたつむすめが二人
接骨木藪をまはってくる
……あをあを燃える山の雪……
けらを着 縄で胸をしぼって
ふたりがこっちへあるいてくれば
その蓋のある小さな手桶は
けふははたけへのみ水を入れてきたのだ
……かれ草もゆれ笹もゆれ
  こんがらかった遠くの桑のはたけでは
  けむりの青いLentoもながれ
  崖の上ではこどもの凧の尾もひかる……
ふたりが藪のこっちにとまり、
しばらく顔を見合わせて
赤い手桶をはたけにおろし
向きあったまゝ胸に手あてゝ立ってると
けらがばさばさしているのに
瓶のかたちのモッペをはいて
おまけに鍬を二梃づつ
せなかにしばってゐるものだから
何か奇妙な鳥踊りでもはじめさう
大陸からの季節の風は
きれぎれ枯草や藪を吹き
さあはじめてもいゝといふ
ところがどうして二人の方は
さっさと胸の縄をとき
鍬をはたけへおろしてしまふ
それからけらを地面へしいて
しばらく座って休むのです

------------------------------------------------------------
(下書稿3推敲前)
------------------------------------------------------------

=本文

下書稿2以前の推敲は「〔日脚がぼうとひろがれば〕」を参照

------------------------------------------------------------
-〔文語詩稿未定稿(041)〕----------------------------------
------------------------------------------------------------
■「〔雲を濾し〕」
------------------------------------------------------------
(本文=下書稿2推敲後)
------------------------------------------------------------

     〔雲を濾し〕

雲を濾し
まことあかるくなりし空かな
子ら歓呼してことごとく
走り出でしも宣なれや

風のひのきはみだるるみだるゝ

------------------------------------------------------------
(下書稿2推敲前)
------------------------------------------------------------

風のひのきはみだるゝみだるゝ
日天子白く翔けたまへども

雲を濾し
まことあかるくなりし空かな
うつろの呆けし黄はちらけ
子供ら歓呼せり

------------------------------------------------------------
(下書稿1「冬のスケッチ」第42葉・第43葉 推敲後)
------------------------------------------------------------
     ※

あかきひのきのかなたより
エステルのくもわきたてば
はるのはむしらをどりいで
かれくさばたのみぎかどを
気がるにまがるインパネス。

     ※

光波のふるひの誤差により
きりもいまごろかゝるなり
げに白日の網膜の
つかれゆゑひらめける羽虫よ。

     ※ 光酸

雲の傷みの重りきて、
光の酸をふりそゝぎ、
電線小鳥 肩まるく、
ほのかになきて溶けんとす。

     ※

風のうつろのぼやけた黄いろ
かれ草とはりがね、郡役所
ひるのつめたいうつろのなかに
あめそゝぎ出でひのきはみだるる。
(まことこの時心象のそらの計器は
 十二気圧をしめしたり。)

     ※

雲を濾し
まことあかるくなりし空かな。
うつろのほうけし黄はちらけ
子供ら歓呼せり。

------------------------------------------------------------
(下書稿1「冬のスケッチ」第42葉・第43葉 推敲前)
------------------------------------------------------------

     ※

あかきひのきのかなたより
エステルのくもわきたてば
はるのはむしらをどりいで
かれくさばたのみぎかどを
気がるにまがるインパネス。

     ※

光波のふるひの誤差により
きりもいまごろかゝるなり
げに白日の網膜の
つかれゆゑひらめける羽虫よ。

     ※ 光酸

いつしか雲の重りきて、
光の酸をふりそゝぎ、
電線小鳥 肩まるく、
ほのかになきて溶けんとす。

     ※

風のうつろのぼやけた黄いろ
かれ草とはりがね、 郡役所
ひるのつめたいうつろのなかに
あめそゝぎ出でひのきはみだるる。
(まことこの時心象のそらの計器は
 十二気圧をしめしたり。)

     ※

よくも雲を濾し
あかるくなりし空かな。
うつろのぼうけし黄はちらけ
子供ら歓呼せり。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 いよいよ夏本番ですが、今年は東北や北海道も既にかなり暑かっ
たようです。賢治的に言うと「雨が降って」「暑い」のは歓迎です
が、実際のところはいかがでしょうか。

 私の方は今週は抗ガン剤投与をした週なので、なかなかに大変で
す。傷みや熱があるわけではないので、おとなしくしていればよい
のですが、やはりじっとしていてもつらい、という実感です。

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