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〔みあげた〕

【冒頭欠】

みあげた。そしてもう私の青白い火は燃え尽きてゐた。けれどもお れはあの壁のあの子供らに天から魂の下ったことを疑はなかった。 私の壁の子供らよ、出て来い。おゝ天の子供らよ。

 何といふせわしいかげらふの足なみだ。

 そして空から小さな小さな光の渦が雨よりしげく降って来る。

 しづかにたゝえ褐色のゆめをくゆらす砂、あの壁の一かけを見せ て呉れ。

 おゝ天の子供らよ。私の壁の子供らよ。

 出て来い。

 おれは今日は霜の羅を織る。鋼玉の瓔珞をつらねる。黄水晶の浄 瓶を刻まう。ガラスの沓をやるぞ。

 おゝ天の子供らよ。私の壁の子供らよ。

 出て来い。

 壁はとうにとうにくづれた。砂はちらばった。そしてお前らはそ れからどこへ行ったのだ。いまどこに居るのだ。【以下欠】