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     大正十年四月(2)

 

    比叡

 

       根本中堂

 

ねがはくは 妙法如来正偏知 大師のみ旨成らしめたまへ。

 

       大講堂

 

いつくしき五色のばんはかけたれどみこころいかにとざしたまはん。

 

いつくしき五色の幡につゝまれし大講堂ぞことにわびしき。

 

うち寂む大講堂の薄明にさらぬ方してわれいのるなり。

 

あらたなるみ像かしこくかゝれども、その慕はしき像はあれど。

 

おゝ大師たがひまつらじ、たゞ知らせきみがみ前のいのりをしらせ。

 

みづうみのひかりはるかにすなつちを掻きたまひけんその日遠しも。

 

われもまた大講堂に鐘つくなりその像法の日は去りしぞと。

 

みづうみは夢の中なる碧孔雀まひるながらに寂しかりけり。

 

      随緑真如

 

みまなこをひらけばひらくあめつちにその七舌しちぜつのかぎを得たまふ。

 

      同

 

さながらにきざむこゝろの峯々のなかにもここはもなかなりしか。

 

暮れそめぬふりさけみればみねちかき講堂あたりまたたく灯あり。