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     大正八年八月より(4)

 

うすぐもの
いつわきにけん
見あぐれば
たゞすばるのみうすびかりして。

 

北風は
すこしの雪をもたらして
あまぐもを追ひ
うす陽そそげり。

 

桐の木の
ねがひはいともすなほなれば
恐らくは
青ぞらに聞かれなんぞ。

 

うみすゞめ
つどひめぐりて
あかつきの
青き魚とる 雲垂れ落つを

 

うちゆらぐ
波の砒素鏡つくりつゝ
くろけむりはきて船や行くらん。

 

鬼ぐるみ
黄金のあかごらいまだ来ず
さゆらぐ梢
あさひを喰めり。

 

鬼ぐるみ
黄金のあかごを吐かんとて
波立つ枝を
あさひに延ばす。

 

サイプレス
忿りは燃えて
天雲のうづ巻をさへ灼かんとすなり。

 

天雲の
わめきの中に湧きいでて
いらだち燃ゆる
サイプレスかも。