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     大正八年八月より(3)

 

巨なる
秋のあぎとに繞られし
薄明をわがひとりたどれる。

 

そらのはて
わづかに明く
たそがれの
秋のあぎとにわがとらるゝらし。

 

風ふけば
こゝろなみだち
うすぐもの空に双子のみどりひかれる。

 

あけがたの
風に吹かるゝ錫紙の
やなぎの前に汽車はとまりぬ。

 

おゝ 蛇紋岩サァペンテインのそばみちに
そらは薄明のつめたきひとみ

 

わが青き蛇紋岩サァペンテインのそばみちに
ことしの終りの月見草咲き。

 

北面のみ
うす雪置きて七つ森
はるかに送る
わかれのことば。

 

ひややかに
雲うちむすび 七つ森
はや飯岡の山かげとなる。

 

朽ちのこりし
玉菜の茎をそら高く
ほうりあげつつ
春は来にけり。