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     大正七年五月より(4)

 

    アンデルセン白鳥の歌

 

「聞けよ」('Hore,')
また、
月はかたりぬ
やさしくも
アンデルセンの月はかたりぬ。

 

海あかく
そらとけじめもあらざれば
みなそこに立つ藻もあらはなり。

 

みなそこの
黒き藻はみな月光に
あやしき腕を
さしのぶるなり。

 

おゝさかな、
そらよりかろきかゞやきの
アンデルセンの海を行くかな。

 

ましろなる羽も融け行き
白鳥は
むれをはなれて
海にくだりぬ。

 

わだつみに
ねたみは起り
青白きほのほのごとく白鳥に寄す。

 

あかつきの
琥珀ひかればしらしらと
アンデルセンの月はしづみぬ。

 

あかつきの琥珀ひかれば白鳥の
こころにはかにうち勇むかな。

 

白鳥の
つばさは張られ
かゞやける琥珀のそらに
ひたのぼり行く。