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     大正七年五月より(3)

 

    北の又

 

雲積みて
雫も滋くなりしかば
青くらがりを立てるやまどり。

 

    葛丸

 

ほしぞらは
しづにめぐるを
わがこゝろ
あやしきものにかこまれて立つ。

 

鳥の毛は
むしられ飛びて
青ぞらを
羽虫のごとくひかり行くかな。

 

息吸へば
白きここちし
くもりぞら
よぼよぼ這へるなまこ雲あり。

 

縮まれる肺いつぱいに
いきすれば
空にさびしき雲うかび立ち。

 

相つぎて
銀雲は窓をよぎれども
ねたみは青く室に澱みぬ。

 

しろがねの
月にむかへば
わがまなこ
雲なきそらに雲をうたがふ。

 

しろがねの月にむかへば
わがまなこ
雲なきそらに
雲をうたがふ。

 

そら高く
しろがねの月かゝれるを
わが目
かなしき雲を見るかな。