目次へ  縦書き

     大正七年五月より(1)

 

    薄明の青木
暮れやらぬ 黄水晶シトリンのそらに
青みわびて 木は立てり
あめ、まつすぐに降り。

 

白光の暮れぞらに立ちて
その青木
ひたすら雨に洗はれて居り。

 

雲の原の
こなたに青木立ちたれば
くれの羽虫ら雨やどりせり。

 

雨やめど
却つて窓は重りして
青木も陰の見えそめにけり。

 

あめ故に
停りありけん 青すずめ
青木をはなれ
夕空を截る。

 

いまははや
たそがれぞらとなりにけり
青木のかなたに
からす飛びつつ。

 

 公園。

 

青黝み 流るゝ雲の淵に立ちて
ぶなの木
薄明の六月に入る。

 

暮れざるに
けはしき雲のしたに立ち
白みいらだつ
アーク燈かな。

 

黒みねを
はげしき雲の往くときは
こゝろ
はやくもみねを越えつつ。

 

暮れそむる
アーク燈の辺
雲たるゝ黒山にむかひ置かれしベンチ

 

黒みねを
わが飛び行けば銀雲の
ひかりけはしくながれ寄るかな。