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     大正六年七月より(9)

 

楊より
よろこびきたるあかつきを
古川に湧くメタン瓦斯かな。

 

そらいつか
うす雲みちて
日輪は ちゞれかしはの原をまろび行けり。

 

高原の
白日輪と
赤毛布シヤツにつくりし鉄道工夫と。

 

雲しろく
ちゞれ柏の高原に
よぼよぼ馬は草あつめたれ。

 

そら青く
開うんばしのせとものの
らむぷゆかしき冬をもたらす。

 

きららかに
雨はれて人はあらざれば
鵝鳥はせ来てわが足をかぢり。

 

旧濶の
沼森のみは
うちたゝむ雲のこなたに
うす陽あびたれ。

 

雨去れば
黄葉きらゝかにひかり立ち
ひとむれの雲は
逃げおくれたり。

 

みだらなる
ひかりを吐きて
黒雲は よせめぐりたり 黒坊主山。
       (冬より春 白丁)