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     大正六年七月より(8)

 

かしはゞら
雲垂れこめて
かみなりのとどろくうちに
峯は雪つむ。

 

岩手やま
あらたに置けるしらゆきは
星のあかりに
うすびかるかも。

 

ぬれ帰り
ひたすら火燃すそのひまに
はがねのそらは はやあけそめぬ。

 

さだめなく
われに燃えたる火の音を
じつと聞きつゝ
停車場にあり

 

冴えわたり
七つ森より風来れば
あたまくらみて
京都思ほゆ。

 

白樺に
かなしみは湧きうつり行く
つめたき風のシグナルばしら。

 

疾みたれど
けさはよろこび身にあまり
そらもひとらもひかりわたれり。

 

あかつきの
黄のちぎれ雲 とぶひまは
小学校によそ行きの窓

 

あかつきは
小学校の窓ガラス
いみじき玻璃にかへられしかな。

 

雲垂るゝ
やなぎのなかの古川に
うかびいでたるあしたの沼気。