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     大正六年七月より(7)

 

 祖父の死

 

うちゆらぐ
火をもて見たる夜の梢
あまりにふかく青みわたれる。

 

香たきて
ちゝはゝ来るを待てる間に
はやうすあかりそらをこめたり。

 

足音は
やがて近づきちゝはゝも
はらからもみなはせ入りにけり。

 

夜はあけて
うからつどへる町の家に
入れまつるとき
にはかにかなし。

 

秋ふけぬ
あまのがはらのいさごほど
わがなしみも
わかれ行くかな。

 

黒つちの
しめりのなかにゆらぎつつ
かなしく晴るゝ山の群青。

 

夜あけより
なきそびれたる山のはに
しらくもよどみ
羽虫めぐれり。

 

きれぎれに雨をともなひ吹く風に
うす月みちて
虫のなくなり。

 

つきあかり
風は雨をもともなへど
今宵は虫のなきやまぬなり。

 

赭々と
よどめる鉄のゲルの上に
さびしさとまり 風来れど去らず。