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     大正六年七月より(2)

 

ひとさりし
待合室はひらくなり
たそがれひかる
そらとやまなみ

 

散り行きし
友らおもへば
たそがれを
そらの偏光ひたひたと責む。

 

うかび立つ
光のこちの 七つ森
みつめんとして
額くらみたり。

 

つるされし
古着まはれば
角立てる その肩越えて
降る青びかり。

 

房たれし
かんざしなどをおもふことも
海行くきとはゆるされもせん。

 

たよりなく
蕩児の群にまじりつゝ
七月末を 宮古に来る。

 

この群は
釜石山田いまはまた
宮古と酒の旅をつゞけぬ。

 

宮古町 夜のそらふかみ
わが友は
山をはるかに妻恋ふるらし。

 

うるはしき
海のびらうど 褐昆布
寂光ヶ浜に 敷かれ光りぬ。

 

寂光のあしたの海の
岩しろく
ころもをぬげばわが身も浄し。