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     大正六年七月より(1)

 

よるのそら
ふとあらはれて
かなしきは
とこやのみせのだんだらの棒

 

夜をこめて
七つ森まできたるとき
はやあけぞらの草穂うかべり。

 

川べりの
石垣のまひるまどろめば
よべよりの鳥なほ啼きやまず。

 

川べりの
まひるをゆらぐ石垣の
まどろみに入りて
また鳥なけり。

 

どもりつゝ
蒸留瓶はゆげをはく
ゆげの硝子には
歪む青ぞら。

 

ゆがみたる
青ぞらの辺に
仕事着の
古川さんはたばこふかせり。

 

柏ばら
ほのほたえたるたいまつを
ひたすら吹けば
火とはおもほえず。

 

あけがたの
琥珀のそらは
凍りしを
大とかげらの雲はうかびて

 

ましろなる
火花をちらし
空は燃ゆ
岩手の山のいたゞきに立てば。

 

岩手やま
いたゞきにして
ましろなる
そらに火花の湧き散れるかも。