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     大正六年五月(3)

 

火をはなれ
窓にいたれば
つめくさの
はなとまくろきガスのタンクと。

 

あさひふる
はくうんぼくにむらがりて
黒きすがるら
しべを噛みたり。

 

葛根田
谷の上なる夕ぞらに
うかびいでたる
あかきひとつぼし。

 

葛根田
薄明穹のいたゞきに
ひかりいでたる
あかきひとつぼし。

 

 夜の柏ばら 六首

 

しらしらと
銀河わたれるかしはゞら
火をもて行けど
馬もきたらず。

 

天の川
しらしらひかり
夜をこめて
かしはゞら行く鳥もありけり。

 

かしはばら
うすらあかりはきたるなり
みなみにわたる天の川より。

 

あまの川
ほのぼの白くわたるとき
すそのをよぎる四ひきの幽霊

 

かしはゞらみちをうしなひ
しらしらと
わたる銀河にむかひたちにけり。

 

谷の上の
はひまつばらにいこひしを
ひとしく四人ねむり入りしか。