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     大正六年五月(1)

 

夕ひ降る
高洞山のやけ痕を
あたまの奥にて
哂ふものあり。

 

しろがねの
雲ながれ行くたそがれを
箱ヶ森らは黒くたゞずむ。 

 

 梁川六首

 

口笛に
応ふるをやめ
鳥はいま
葉をひるがへす木立に入りぬ。

 

鳴きやみし
鳥はいづちともとめしに
木々はみだれて 雲みなぎれり。

 

なきやみし
鳥をもとめて
泪しぬ
木々はみだれて葉裏をしらみ。

 

口笛に こたふる鳥も去りしかば
いざ行かんとて
なほさびしみつ。

 

木々みだれ
かゞやく上に
天雲の
みなぎりわたる六月の峡

 

もしや鳥
木々のしげみより 見あるらん
峡の草木は
みだれかゞやき。

 

 

おきなぐさ
ふさふさのびて
青ぞらにうちかぶさりて
ひらめき出でぬ。

 

な恐れそ
れんげつゝじは赤けれど
ゑんじゅも臨む 青ぞらのふち