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     大正六年一月(2)

 

   第四日夜

 

くろひのき
月光澱む雲きれに
うかがひよりて何か企つ。

 

しらくもよ夜のしらくもよ
月光は重し
気をつけよかのわるひのき。

 

 第五日夜

 

雪とけてひのきは延びぬ
はがねのそら
匂ひいでたる月のたわむれ。

 

うすらなく
月光瓦斯のなかにして
ひのきは枝の雪をはらへり。
(はてしらぬ世界にけしのたねほども
 菩薩身をすてたまはざるはなし。)

 

 第六日昼

 

年わかき
ひのきゆらげは日もうたひ
碧きそらよりふれる綿ゆき。

 

 第六日夕

 

ひまはりの
すがれの茎らいくたびぞ
暮のひのきをうちめぐりたる。

 

 第七日夜

 

たそがれの
雪にたちたるくろひのき
しんはわづかにそらにまがりて
(ひのき、ひのき、まことになれはいきものか われとはふかきえ にしあるらし。
 むかしよりいくたびめぐりあひにけん。ひのきよなれはわれをみ しらず。)

 

 第X日。

 

しばらくは
試験つゞきとあきらめて
西日にゆらぐ茶いろのひのき

 

ほの青き
そらのひそまり、
光素エーテルの弾条もはぢけんとす みふゆはてんとて。