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     大正六年一月(1)

 

   第一日昼 

 

なにげなく
窓を見やれば
ひともとのひのきみだれゐて
いとゞ恐ろし。

 

あらし来ん
そらのうす青
なにげなく乱れたわめる
一もとのひのき。

 

風しげく
ひのきたわみてみだるれば
異り見ゆる四角窓かな。
(ひかり雲ふらふらはする青の虚空
延びたちふるふ みふゆのこえだ。)

 

   第二日夜

 

雪降れば
昨日のひるのわるひのき
菩薩すがたにすくと立つかな。

 

わるひのき
まひるみだれしわるひのき
雪をかぶれば
菩薩すがたなり。

 

   第三日夕

 

たそがれに
すつくと立てるまつ黒の
ひのきのせなの銀鼠雲

 

窓がらす
落つればつくる四角のうつろ
うつろのなかの
たそがれひのき。