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     大正五年十月より(6)

 

霜ばしら
砕けて落つるいわ崖は
陰気至極の Liparitic tuff

 

凍りたる
凝灰岩の岩崖に
その岩崖に
そつと近より。

 

凍りたる凝灰岩の岩崖を
踊りめぐれる
影法師なり。

 

シベリアの汽車に乗りたるこゝちにて
晴れたる朝の教室に
疾む。

 

そらにのみ
こころよ行けといのるとき
そらはかなしき蛋白光の

 

流れ入る雪のあかりに
溶くるなり
夜汽車をこめし苹果の蒸気

 

つゝましき
白めりやすの手袋と
夜汽車をこむる苹果の蒸気と。

 

あかつきの
真つぱればれのそらのみどり
竹は手首を
宙にうかべたり。

 

東京の
光の渣にわかれんと
ふりかへりみて
またいらだてり。