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     大正五年十月より(4)

 

こは雪の縞ならなくに
正銘の
よるのうつろのひかるだんだら。

 

ギザギザの硬き線あり
むらがりて
ねむりの前のもやにひかれり。

 

こなたには
紫色のギザギザと
ひかるそらとのあしきあらそひ。

 

霜枯れし
トマトの気根
しみじみと
うちならびつゝ
冬きたるらし。

 

青腐れし
トマトたわわのかれ枝と
ひでりあめとのなかなるいのり。

 

霜腐れ
青きトマトの実を裂けば
さびしきにほひ
空に行きたり。

 

はだしにて
雲落ちきたる十月の
トマトばたけに立ちてありけり。

 

ある星は
そらの微塵のたゞなかに
ものを思はずひためぐり行く

 

ある星は
われのみひとり大空を
うたがひ行くとなみだぐみたり。

 

なまこ雲
ひとむらの星
西ぞらの微光より来る馬のあし音。