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     大正五年十月より(2)

 

はるかなる
山の刻みをせなにして
夢のごとくにあらはれし雁。

 

気層つめたく酔ひしらけ
ひかりのしめりほの赤し
めぐるはきらぼし。

 

みんなして
写真とると台の上に
ならべば朝の虹ひらめけり。

 

何もかも
やめてしまへと弦月の空にむかへば
落ちきたる霧。

 

弦月の
そつとはきたる薄霧を
むしやくしやしつゝ
過ぎ行きにけり。

 

にせものの
真鍮いろの脂肪酸
かゝるあかるき空にすむかな。

 

東にも西にもみんな
にせものの
どんぐりばかりひかりあるかな。

 

こざかしく
しかもあてなきけだものの
尾をおもひつゝ
草穂わけ行く。

 

しろがねの
月はうつりぬ
humusフィーマスの 野のたまり水
荷馬車のわだち。

 

青びかりのかゝる天盤の下にして
あまりに沈む Lipariteかな