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     大正五年十月より(1)

 

あけがたの食堂の窓
そらしろく
はるかに行ける鳥のむれあり。

 

淀みたる夜明の窓を
無造作に過ぐる鳥あり
冬ちかみかも。

 

さだめなく
鳥はよぎりぬ
うたがひの
鳥はよぎりぬ
あけがたの窓

 

鉄ペン鉄ペン
鉄ペンなんぢたゞひとり
わがうたがひの
あれ野にうごく。

 

雲ひくき峠超ゆれば
(いもうとのつめたきなきがほ)
丘と野原と。

 

草の穂は
みちにかぶさりわが靴は
つめたき露にみたされにけり。

 

あけがたの
皿の醤油にうつり来て
桜の葉など顫ひあるかな。

 

すゞかけの木立きらめく朝なるを
乳頭山にゅうつむりやま
ゆき降りにつゝ。

 

いたゞきに
いささかの雪をかぶるとて
あまりいかめし
にゅうつむり山。

 

蜘蛛のいと
ながれて
きらとひかるかな
源太ヶ森の
碧き山のは。