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     大正五年七月(3)

 

     岩手公園

 

うちならび
うかぶ紫苑にあをあをと
ふりそゝぎたるアーク燈液

 

     農場

 

風ふけば
まるめろの枝ゆれひかり
トマトさびしく
みちにおちたり。

 

そらしろく
温き堆肥はこほろぎの
なけるはたけにはこばれにけり。

 

     仙台

 

わたぐもの
幾重たゝめるはてにして
ほつとはれたるひときれのそら。

 

たゞしばし
群とはなれて阿武隈の
岸にきたればこほろぎなけり。

 

水銀の
あぶくま河にこのひたひ
ぬらさんとしてひとりきたりぬ。

 

雲たてる
蔵王ざおうの上につくねんと
白き日輪かゝる朝かな。

 

銀の雲
焼杭のさく
われはこれ
こゝろみだれし
旅のひとなり。

 

かくてまた
冬となるべきよるのそら
漂ふ霧に ふれる月光。

 

夜の底に
霧たゞなびき
燐光の
夢のかなたにのぼりし火星