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     大正五年七月(1)

 

そら青く
観音は織る
ひかりのあや
ひとには
ちさき
まひるのそねみ。

 

夏きたりて
人みな去りし寄宿舎を
めぐる青木に
あめそゝぎつゝ。

 

     湯船沢

 

七月の森のしづまを
月いろの
わくらばみちにみだれふりしく。

 

うちくらみ
梢すかせばそらのいろ
たゞならずして
ふれるわくらば。

 

     石ヶ森

 

いまははや誰か惑はん
これはこれ安山岩の岩頸にして。

 

     沼森

 

この丘の
いかりはわれも知りたれど
さらぬさまにて 草穂つみ行く。

 

     同

 

山山は
つどひて青き原をなす
さてその上の丘のさびしさ。

 

     新網張

 

まどろみに
ふっと入りくる丘のいろ
海のごとくにさびしきもあり。

 

しろがねの夜あけの雲は
なみよりも
なほたよりなき野を被ひけり。

 

     大沢オサ坂峠

 

大沢坂の峠も
くろく
たそがれのそらのなまこの雲にうかびぬ。

 

     同 まひる。

 

ふとそらの
しろきひたひにひらめきて
青筋すぎぬ
大沢坂峠。