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     大正五年三月より(4)

 

わが腮を
撫づる床屋のたちまちに
くるひいでよとねがふたそがれ。

 

くるほしく
ひばりむらがり
ひるすぎて
ますます下る紺の旗雲。

 

うすぐもる
温石石の神経を
盗むわれらにせまるたそがれ。

 

夕ぐれの温石石の神経は
うすらよごれし 石絨にして。

 

今日もまた
岩にのぼりていのるなり
川はるばるとうねり流るを

 

笹燃ゆる音は鳴り来る
かなしみをやめよと
野火の音は鳴りくる。

 

雪山の反射のなかに
嫩草を
しごききたりて馬に喰ましむ。

 

一にぎり
草をはましめ
つくづくと
馬の機嫌をとりてけるかな。

 

仕方なく
すきはとれども
なかなかに馬従はずて雪ぞひかれる。

 

風きたり
高鳴るものはやまならし
またはこやなぎ
さとりのねがひ。