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     大正五年三月より(3)

 

しめりある
黒き堆肥は四月より
ふるふ樹液とかはるべきかな。

 

山山はかすみて繞る
今日はわれ
畑を犂くとて
馬に牽かれぬ

 

洗ひたる
実習服のこころよさ
草に臥ぬれば
日はきららかに。

 

さわやかに
朝のいのりの鐘鳴れと
ねがひて過ぎぬ
君が教会

 

北上は
雲のなかよりながれ来て
この熔岩の台地をめぐる

 

今日よりぞ
分析はじまる
瓦斯の火の
しづかに青くこゝろまぎれぬ。

 

双子座の
あはきひかりは
またわれに
告げて顫ひぬ 水いろのうれひ。

 

われはこの
夜のうつろも恐れざり
みどりのほのほ超えも行くべく。

 

伊豆の国 三島の駅に
いのりたる
星にむかひて
またなげくかな。

 

黄昏の
中学校のまへにして
ふっと床屋に
入りてけるかな。