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     大正五年三月より(2)

 

さそり座よ
むかしはさこそいのりしが
ふたゝびここにきらめかんとは。

 

輝石たち
こゝろせはしく別れをば
言ひかはすらん函根のうすひ。

 

わかれたる
鉱物たちのなげくらめ
はこねの山の
うすれ日にして

 

ひはいろの
重きやまやまうちならび
はこねのひるの
うれひをめぐる。

 

うすびかる
春のうれひを
ひわいろの笹山ならぶ函根やまかな。

 

風わたり
しらむうれひのみづうみを
めぐりて重きひわいろのやま。

 

うるはしく
猫睛石はひかれども
ひとのうれひはせんすべもなし。

 

そらしろく
この東京のひとむれに
まじりてひとり
京橋に行く。

 

浅草の
木馬に乗りて
哂ひつゝ
夜汽車を待てどこゝろまぎれず。

 

つぶらなる白き夕日は
喪神のかゞみのごとくかかるなりけり。