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     大正三年四月(9)

 

しろあとの
四っ角山につめ草の
はなは枯れたり
しろがねの月

 

碧びかり
いちめんこめし西ぞらに
ぼうとあかるき城あとの草

 

行けど行けど
円き菊石
をちぞらの 雲もひからず
水なき河原

 

さびしきは
壁紙の白
壁紙の しろびかりもてながれたる川

 

わが眼路の
遠き日ごとに山鳩は
さびしきうたを送りこすかも。

 

しやが咲きて
きりさめ降りて
旅人は
かうもりがさの柄をかなしめり。

 

しんとして
街にみちたる
陽のしめりに
白菜のたばは 後光しにけり。

 

鉄橋の汽車に夕陽が落ちしとて
ここまでペンキ匂ひくるかな。

 

乾きたる
石をみつめてありしかな
薄陽は河原いちめんに降り。

 

いかにかく
みみづの死ぬる日なりけん
木かげに栗の花しづ降るを。