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     大正三年四月(6)

 

職業なきを
まことかなしく墓山の
麦の騒ぎを
じつと聞きゐたれ。
 

 

たゞ遠き
夜の火にはこべ
かくわれは
よるひるそらの底にねがへり。
 

 

金星の
瞑するときしわれなんだす
まことは北のそらはれぬゆゑ。
 

 

対岸に
人石をつむ
人石を
積めどさびしき
水銀の川
 

 

すべり行く
水銀の川
そらしろく
つゆ来んけはひ鳥にもしるし。
 

 

そらはいま
蟇の皮にて張られたり
その黄のひかり
その毒のひかり。
 

 

東には紫磨金色の薬師仏
そらのやまひにあらはれ給ふ。
 

 

いかに雲の原のかなしさ
あれ草も微風もなべて猩紅の熱。
 

 

火のごとき
むら雲飛びて薄明は
われもわが手もたよりなきかな。
 

 

なつかしき
地球はいづこ
いまははや
ふせど仰げどありかもわかず。