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     大正三年四月(12)

 

かすかなる
日照りあめ降り
しろあとの
めくらぶだうはれひかりけり。

 

なにげなき
山のかげより虹の脚
ふつと光りて虫鳴けるかな。

 

やま暗く
やなぎはすべて錫紙の
つめたき葉もてひでりあめせり。

 

秋風の
あたまの奥にちさき骨
くだけちるらん
音のあるけり。

 

日は薄く
耕地に生えし赤草の
わなゝくなかに落ち入れる鳥。

 

鳥さしは
をとりをそなへ
草明き
北上ぎしにひとりすはれり。

 

空ひくく
銀の河岸の製板所
汽笛をならし夜はあけにけり。

 

舎利別の
川ほのぼのとめぐり来て
製板所より
まつしろの湯気

 

入合の町のうしろを巨なる
なめくじの銀の足
這ひしことあり。

 

あまの邪鬼じゃく
金のめだまのやるせなく
青きりんごを
かなしめるらし。