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     大正三年四月(10)

 

いなびかり
そらに漲ぎり
むらさきの
ひかりのうちに家は立ちたり。

 

いなびかり
またむらさきにひらめけば
わが白百合は
思ひきり咲けり。

 

空を這ふ
赤きいなづま。
わが百合の
花はうごかずましろく怒れり。

 

いなづまに
しば照らされて
ありけるに
ふと寄宿舎が恋しくなれり。

 

夜のひまに
花粉が溶けて
わが百合は
黄いろに染みてそのしづく光れり。

 

花さける
ねむの林のたそがれを
からすのはねを嗅ぎつゝあるけり。

 

いざよひの
月はつめたきくだものの
匂をはなちあらはれにけり。

 

四時に起きて
支度ができて
発たるに
はやくすばるもいでてありけり。

 

あけがたの
黄なるダリヤを盗らんとて
そらにさびしき
にほひを感ず。

 

夜はあけぬ
ふりさけ見れば
山山の
白くもに立つでんしんばしら