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     明治44年1月より(6)

 

鉛などとかしてふくむ月光の重きにひたる墓山の木々。

 

軸棒はひとばん泣きぬ凍りしそら ピチとひびいらん微光の下に。

 

凍りたるはがねの空の傷口にとられじとなくよるのからすなり。

 

かたはなる月ほの青くのぼるときからすはさめてあやしみ啼けり。

 

鉛筆のこなによごれしてのひらと異端文字とを風がふくなり。

 

霜ばしら丘にふみあれば学校のラッパがはるかに聞えきたるなり。

 

いくたびか愕きさめて朝となりしからすのせなかに灰雲がつき。

 

ブリキ缶がはらだゝしげにわれをにらむ、つめたき冬の夕方のこと。

 

潅木のかれ葉赤き実かやの穂の銀にまぢりて風に顫ふか。

 

さいかちの莢のごとくからすら薄明のそらにうかびてもだすなりけり。