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     明治44年1月より(4)

 

黒板は赤き傷うけ雲垂れてうすくらき日をすゝり泣くなり。

 

いたゞきのつめたき風に身はすべて
わかれはつるもかなしくはあらじ。

 

ものがみなたそがるゝころやうやくに
み山の谷にたどり入りぬる。

 

褐色のひとみの奥に何やらん
悪しきをひそめわれを見る牛

 

愚かなるその旅人は殺されぬ
はら一杯のものはみしのち

 

泣きながら北に馳せゆく塔などの
あるべき空のけはひならずや

 

今日もまた宿場はづれの顔赤き
をんなはひとりめしを喰へるぞ。

 

深み行きてはては底なき淵となる
夕ぐれぞらのふるひかなしも。

 

から草はくろくちいさき実をつけて
風にふかれて秋は来にけり。

 

山鳩のひとむれ白くかがやきてひるがへり行く紺青のそら