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     明治44年1月より(2)

 

とろとろと甘き火をたきまよなかの
み山の谷にひとりうたひぬ。

 

龍王をまつる黄の旗紺の旗
行者火渡る日のはれぞらに。

 

楽手らのひるはさびしきひと瓶の
酒をわかちて  銀笛を吹く。

 

たいまつの火に見るときは木のみどり
岩のさまさへたゞならずして。

 

雲垂れし裾野のよるはたいまつに
人をしたひて 野馬馳せくる。

 

そらいろのへびを見しこそかなしけれ
学校の春の遠足なりしが。

 

そら耳かいと爽かに金鈴の
ひゞきを聞きぬ しぐれする山

 

瞑すれば灰いろの家丘にたてり
さてもさびしき丘に木もなく。

 

みなかみのちさきはざまに建てられし
村や淋しき田に植ゆる粟。

 

やうやくに漆赤らむ丘の
奇しき服つけし人にあひけり。