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〔高原の空線もなだらに暗く〕

高原の空線もなだらに暗く
乳房のかたちの種山は
濁った水いろのそらにうかんで
みちもなかばに暮れてしまった
  ……ひるは真鍮のラッパを吹いて
    あつまる馬に食塩をやり
    いまは溶けかかったいちはつの花をもって
    ひとは峠を下って行った……
その古ぼけた薄明穹のいたゞきを
すばやく何か白い光が擦過する
そこに巨きな魚形の雲が
そらの夕陽のなごりから
尻尾を赤く彩られ
しづかに東へ航行する
ふたたびそらがかがやいて
雲の魚の嘴は
一すじ白い折線を
原の突起にぎらぎら投げる
音もごろごろ聞えてくれば
はやくも次の赤い縞
いままた赤くひらめいて
浅黄ににごったうつろの奥に
二列の尖った巻層雲や
うごくともない水素の川を
わくわくすくほど幻怪に見せ
つぶやくやうなそのこだま
凸こつとして苔生えた
あの ふん岩の 残丘モナドノック
そのいたゞきはいくたびふるひ
海よりもさびしく暮れる
はるかな草のなだらには
ひるの馬群がいつともしらず
いくつか円い輪をつくり
からだを密に寄り合ひながら
このフラッシュをあびてるだらう
そこに四疋の二才駒
あの高清の命の綱も
首を垂れたり尾をふったり
やっぱりじっと立ってゐる
蛾はほのじろく艸をとび
あちこちこわれた鉄索のやぐらや
谷いっぱいの青いけむり
この県道のたそがれに
あゝ心象イメーヂの高清は
しづかな磁製の感じにかはる