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火祭

火祭りで、
今日は一日、
部落そろってあそぶのに、
おまへばかりは、
町へ肥料の相談所などこしらえて、
今日もみんなが来るからと、
外套など着てでかけるのは
いゝ人ぶりといふものだと
厭々ひっぱりだされた圭一が
ふだんのまゝの筒袖に
栗の木下駄をつっかけて
さびしく眼をそらしてゐる
  ……帆舟につかず袋につかぬ
    大きな白い紙の細工を荷馬車につけて
    こどもらが集まってゐるでもない
    松の並木のさびしい宿を
    みんなでとにかくゆらゆら引いて
    また張合なく立ちどまる……
くらしが少しぐらゐらくになるとか
そこらが少しぐらゐきれいになるとかよりは
いまのまんまで
誰ももう手も足も出ず
おれよりもきたなく
おれよりもくるしいのなら
そっちの方がずっといゝと
何べんそれをきいたらう
   (みんなおなじにきたなくでない
    みんなおなじにくるしくでない)
  ……巨きな雲がばしゃばしゃ飛んで
    煙草の函でめんをこさえてかぶったり
    白粉をつけて南京袋を着たりしながら
    みんなは所在なささうに
    よごれた雪をふんで立つ……
さうしてそれもほんたうだ
   (ひば垣や風の暗黙のあひだ
    主義とも云はず思想とも云はず
    たゞ行はれる巨きなもの)
誰かゞやけに
やれやれやれと叫べば
さびしい声はたった一つ
銀いろをしたそらに消える