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七二八

驟雨カダチはそそぎ〕

一九二六、七、一五、

驟雨カダチはそそぎ
土のけむりはいっさんにあがる
  あゝもうもうと立つ湯気のなかに
  わたくしはひとり仕事を忿る
    ……枯れた羊歯の葉
      野ばらの根
      壊れて散ったその塔を
      いまいそがしくめぐる蟻……
杉は驟雨のながれを懸け
またほの白いしぶきをあげる

(本文=下書稿5推敲後)



(下書稿5推敲前)

七二八

一九二六、七、一五、

驟雨カダチはそそぎ
開墾おこした今日の幾坪は
いっさんに土のけむりをあげる
  あゝもうもうと立つ湯気のなかに
  わたくしはひとり労働を忿いか
    ……枯れた羊歯の葉、野ばらの根
      壊れて散ったその塔を
      いまいそがしくめぐる蟻……
杉は驟雨のながれを懸け
またほの白いしぶきをあげる



(下書稿4推敲後)

驟雨カダチはそゝぎ
開墾おこした今日の七坪は
いっさんに土のけむりと湯気をあげる
ぬれて
ぼうとして
 あゝもうもうと立つ湯気のなかに
 わたくしはひとり労働を忿る
 ……枯れた羊歯の葉、
   のばらの根
   こわれて散ったその塔を
   いまいそがしくめぐる蟻……
杉はカダチの流れを懸け
またほの白いしぶきを噴く



(下書稿4推敲前)

驟雨カダチはそゝぎ
耕起した藪は
いっさんに土のけむりや湯気をあげる
ぬれて
ぼうとして
ぎしぎし歯噛みしながら
なにを憎めばいゝか考へてゐる
 ……枯れた羊歯の葉
   菊芋の茎
   こはれて散った塔のまはりを
   いまいそがしく往来する蟻……
杉にそゝいで
カダチは白いしぶきをあげる



(下書稿3推敲後)

カダチはそゝぎ
開墾した藪は
土のけむりや湯気をあげる
 ……それにやくざな土のにほひだ……
ぬれてぼうとして
ぎしぎしおこる
おかしなことだ
杉にそゝいでは
カダチは白いしぶきをあげる
 ……枯れた羊歯の葉
   菊芋の茎
   壊れて散った塔のまはりを
   いまいそがしく往来する蟻……
杉には白いしぶきをあげる
あゝ愛情の図式を洗へ



(下書稿3推敲前)

雨はうつゝにそゝぎ
開墾した藪は
土のけむりと湯気とをあげて
 ……森の向ふの白びかり……
ぬれてぼうとして
ひとりぎしぎし歯噛みする
いったいこれがおれなのか
 ……枯れた羊歯の葉
   菊芋の茎
   壊れて散った塔のまはりを
   いまいそがしく往来する蟻……
杉には白いしぶきをあげる
この七月のひなかの雨
熱く切ないわたしから
あゝ愛情の図式を洗へ



(下書稿2)

七二八

圃場

一九二六、七、一五、

開墾した土のなかにたち
うつつに雨を浴びながら
ひとりぎしぎし歯噛みする
いったいこれがおれなのか
   枯れた羊歯の葉
   芋の茎
   壊れて散ったその塔を
   いまいそがしく往来する蟻
杉には白いしぶきをあげる
この七月のひなかの雨よ
熱く切ないわたしから
あゝ 愛情の図式を洗へ



(下書稿1推敲後)

七二八

圃場

一九二六、七、一五、

黒く燃されて
開墾おこした土のなかに立ち
うつつに雨を浴びながら
ひとりぎしぎし歯噛みする
いったいこれがおれなのか
   枯れた羊歯の葉
   菊芋の茎
   壊れて散った塔のまはりを
   いまいそがしく往来する蟻
杉には白いしぶきをあげる
この七月のひなかの雨よ
熱く切ないわたしから
あゝ愛情の図式を洗へ



(下書稿1推敲前)

七二八

圃場

一九二六、七、一五、

黒く燃されて
開墾おこした土のなかに立ち
うつつに雨を浴びてゐる
いったいこれがおれなのか
   枯れた羊歯の葉
   菊芋の青い茎
   壊れて散った塔のまはりを
   いまいそがしく往来する蟻
夏立の雨よ
まっすぐに降りそゝいで
おれの熱い髪毛を洗へ