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七一一

水汲み

一九二六、五、一五、

ぎっしり生えたち萱の芽だ
紅くひかって
仲間同志に影をおとし
上をあるけば距離のしれない敷物のやうに
うるうるひろがるち萱の芽だ
   ……水を汲んで砂へかけて……
つめたい風の海蛇が
もう幾脈も幾脈も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行く
   ……水を汲んで砂へかけて……
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子たねをあつめてゐる
   ……水を汲んで砂へかけて……
岸までくれば
またあたらしいサーペント
   ……水を汲んで水を汲んで……
遠くの雲が幾ローフかの
麺麭にかはって売られるころだ

(本文=定稿)



(下書稿4推敲後)

七一一

水汲み

一九二六、五、一五、

ぎっしり生えたち萱の芽だ
紅くひかって
仲間同志に影をおとし
上をあるけば距離のしれない敷物のやうに
うるうるひろがるち萱の芽だ
   ……水を汲んで砂へかけて……
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行く
   ……水を汲んで 砂へかけて……
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子たねをあつめてゐる
   ……水を汲んで 砂へかけて……
岸まで来れば
またあたらしいサーペント
   ……水を汲んで 水を汲んで……
遠くの雲が幾ローフかの
麺麭にかはって売られるころだ



(下書稿4推敲前)

七一一

水汲み

一九二六、五、一五、

ぎっしり生えたち萱の芽だ
赤くひかって
仲間同志に影をおとして
上をあるけば距離のしれない敷物のやうに
うるうるひろがるち萱の芽だ
   ……水を汲んで砂へかけて……
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行く
   ……水を汲んで 砂へかけて……
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子たねをあつめてゐる
   ……水を汲んで 砂へかけて……
岸まで来れば
またあたらしいサーペント
   ……水を汲んで 水を汲んで……
遠くの雲が幾ローフかの
麺麭にかはって売られるころだ



(下書稿3推敲後)

七一一

水汲み

一九二六、五、一五、

レーキを投げてねころぶと
ぎっしり生えた萱の芽だ
赤くひかって、
仲間同志に影をおとして
距離のしれない敷物のやうにいちめんひろがる萱の芽だ
   ……水を汲んで砂へかけて……
上をあるけば去年のかれはもがさがさ云ふ
起きれば川がぎらぎらひかる
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行く
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子たねをあつめてゐる
   ……水を汲んで砂へかけて……
岸まで来ればまたあたらしいサーペント
   ……水を汲んで水を汲んで……



(下書稿3推敲前)

七一一

小憩

一九二六、五、一五、

レーキを投げてねころべば
赤い萱芽が頭を刺すし
起きれば川がぎらぎらひかる
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡ってゐるし
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子たねを喰べてゐる
あゝあ
またあたらしいサーペントだ



(下書稿2推敲後)

七一一

(二字不明)

一九二六、五、一五、

レーキを投げてねころべば
紅い萱草がせなかを刺すし
起きれば川がぎらぎらひかる
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡ってゐる
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子をたべてゐる
あああ
またあたらしいサーペント



(下書稿2推敲前)

七一一

(二字不明)

一九二六、五、一五、

レーキを投げてねころべば
紅い萱草が(数文字不明)く
起きれば川がぎらぎらひかる
つめたい風の海蛇が
もう幾脉も幾脉も
野ばらの藪をすり抜けて
川をななめに遡って行けば
向ふ岸には
蒼い衣のヨハネが下りて
すぎなの胞子をたべてゐる
あああ
またあたらしいサーペント



(下書稿1)

七一一

(二字不明)

一九二六、五、一五、

岸まで来たら
紅い萱草にからだを投げろ
そらは(数文字不明)
風がいく脉もいく脉も
すきとほった海蛇になって遡り
向ふ岸には
(数文字不明)ヨハネが下りて
すぎなの胞子をたべてゐる

またあたらしいサーペント
(数文字不明)か(数文字不明)