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四五

海蝕台地

一九二四、四、六、

日がおしまひの六分圏セキスタントにはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんではてない意慾の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    斎時の春の胸を噛む
    見惑塵思の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
粛々起伏をつゞけながら
あえかなそらのけむりにつゞく
  ……それはひとつの海蝕台地
    古いカルパの紀念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
憔悴苦行の梵土をまがふ
坎可な高原住者の隊が
一れつ蔭いろの馬をひいて
つめたい宙のけむりに消える

(本文=定稿)



(下書稿2推敲後)

四五

海蝕台地

一九二四、四、六、

日がおしまひの六分圏セキスタントにはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんではてない意慾の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    斎時の春の胸を噛む
    見惑塵思の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
粛々起伏をつゞけながら
あえかなそらのけむりにつゞく
  ……それはひとつの海蝕台地
    古い劫の紀念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
憔悴苦行の梵土をまがふ
坎可な高原住者の隊が
一れつ蔭いろの馬をひいて
つめたい宙のけむりに消える



(下書稿2推敲前)

四五

海蝕台地

一九二四、四、六、

日がおしまひの八分圏オクタントにはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんではてない塵思の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    斎時の春の胸を噛む
    見惑塵思の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
あえかなそらのけむりにつゞく
  ……それはひとつの海蝕台地
    憂鉢羅竜王の所造であるといふやうに
    雷がしづかにつぶやくばかり……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
苦行にやつれた求法の群は
一れつ青ざめた馬をひいて
つめたいそらのけむりに消える



(下書稿1推敲後)

四五

海蝕台地

一九二四、四、六、

日がおしまひの八分圏オクタントにはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんで憂鉢羅華うばらけとう油の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    遍路の春の胸を噛む
    求法航者シンドバードの海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
あえかなそらのけむりにつゞく
  ……それはひとつの海蝕台
    むかしの海の紀念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
わたくしはこのかなしい夕景のなかに消えていきたい
ぼんやりつめたい四月のしろいそらになりたい



(下書稿1推敲前)

四五

地質調査

一九二四、四、六、

日がおしまひの八分圏オクタントにはいってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんで憂鉢羅うばら(一字不明)とう油の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    旅路の春の胸を噛む
    求法航者シンドバードの海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
海鳴(二字不明)けぶりに声なく(数文字不明)
  ……それはひとつの海蝕台地
    迦葉仏在世のころの波際である……
たよりなくつけられたそのみちを
わたくしはこのかなしい夕景のなかに消えていきたい
ぼんやりつめたい四月のしろいそらになりたい