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三三一

孤独と風童

一九二四、一一、二三、

シグナルの
赤いあかりもともったし
そこらの雲もちらけてしまふ
プラットフォームは
Yの字をした柱だの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすっかり酸えてしまった

東へ行くの?
白いみかげの胃の方かい
さう
では おいで
行きがけにねえ
向ふの
あの
ぼんやりとした葡萄いろのそらを通って
大荒沢やあっちはひどい雪ですと
ぼくが云ったと云っとくれ
では
さようなら

(本文=定稿)



(下書稿2)

三三一

孤独と風童

一九二四、一一、二三、

シグナルの
赤いあかりもともったし
そこらの雲もちらけてしまふ
プラットフォームは
Yの字をした柱だの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすっかり酸えてしまった

東へ行くの?
白いみかげの胃の方へかい
さう
では おいで
行きがけにねえ
向ふの
あの
ぼんやりとした葡萄いろのそらを通って
大荒沢やあっちはひどい雪ですと
ぼくが云ったと云っとくれ
では
さようなら



(下書稿1推敲後)

三三一

孤独と風童

一九二四、一一、二三、

シグナルの、赤いあかりもともったし、
プラットフォームは
Yの字をしたはしらだの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすっかり酸えてしまった
東へ行くの?
白いみかげの胃の方へかい
さう では おいで
行きがけにねえ
向ふの
あの、ぼんやりとした葡萄いろのそらを通って
大荒沢やあっちはひどい雪ですと
ぼくが云ったと云っとくれ
ぢゃさようなら



(下書稿1推敲前)

三三一

孤独と風童

一九二四、一一、二三、

シグナルの赤いあかりもともったし
そこらの雲もちらけてしまふ
プラットフォームは
Yの字をしたはしらだの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすっかり酸えてしまった
東へ行くの
白いみかげの胃の方へかい
さう では おいで
行きがけにねえ
向ふの
あのぼんやりとした葡萄いろのそらを通って
大荒沢や向ふはひどい雪ですと
ぼくが云ったと云っとくれ
ぢゃさようなら
樺の林の芽が噴くころにまたおいで
こんどの童話はおまへのだよ



(「貌」発表形 1926年1月10日)

孤独と風童

シグナルの赤いあかりもともつたし
そこらの雲もちらけてしまふ
 プラットホームは
Yの字をしたはしらだの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすつかり酸えてしまつた
東へ行くの
白いみかげの胃の方へかい
 さう ではおいで
行きがけにねえ
向ふのあの
ぼんやりとした葡萄色の空を通つて
大荒沢や向ふはひどい雪ですと
ぼくが云つたと云つてくれ
ぢやさようなら
樺の林の芽が噴くころにまたおいで
こんどの童話はおまへのだから



(「貌」発表形 原稿)

心象スケッチ

孤独と風童

シグナルの赤いあかりもともったし
そこらの雲もちらけてしまふ
プラットフォームは
Yの字をしたはしらだの
犬の毛皮を着た農夫だの
けふもすっかり酸えてしまった
東へ行くの
白いみかげの胃の方へかい
 さう ではおいで
行きがけにねえ
向ふの あの
ぼんやりとした葡萄いろの空を通って
大荒沢や向ふはひどい雪ですと
ぼくがいったといっとくれ
ぢゃ さようなら
樺の林の芽が噴くころにまたおいで
こんどの童話はおまへのだから