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二九

休息

一九二四、四、四、

中空なかぞらは晴れてうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀むのは
水晶球のくもりのやう
  ……さむくねむたいひるのやすみ……
そこには暗い乱積雲が
古い洞窟人類の
方向のない Libido の像を
肖顔のやうにいくつか掲げ
そのこっちではひばりの群が
いちめん漂ひ鳴いてゐる
  ……さむくてねむたい光のなかで
    古い戯曲の女主人公ヒロイン
    ひとりさびしくまことをちかふ……
氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
つぎからつぎと水路をわたり
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎で
ふしぎな曲線カーヴを描いたりする
    (eccolo qua!)
風を無数の光の点が浮き沈み
乱積雲の群像は
いまゆるやかに北へながれる

(本文=定稿)



(下書稿3推敲後)

二九

休息

一九二四、四、四、

中空なかぞらは晴れてうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀むのは
水晶球のくもりのやう
  ……さむくねむたいひるのやすみ……
そこには暗い乱積雲が
古い洞窟人類の
方向のない Libido の像を
肖顔のやうにいくつか掲げ
そのこっちではひばりの群が
そらいちめんにないてゐる
  ……さむくてねむたい光のなかで
    古い戯曲の女主人公ヒロイン
    ひとりまことをちかふのだ……
氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
つぎからつぎと水路をわたり
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎で
ふしぎな曲線カーヴを描いたりする
    (eccolo qua!)
風を無数の光の点が浮き沈み
乱積雲の群像は
いまゆるやかに北へながれる



(下書稿3推敲前)

二九

休息

一九二四、四、四、

中空なかぞらは晴れてうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀んでゐる
そこには暗い乱積雲が
古い洞窟人類の
方向のない Libido の像を
肖顔のやうにいくつか掲げ
そのこっちではひばりの群が
風いちめんにないてゐる
  ……さむくてねむたい耳もとで
    古い小説ノベル女主人公ヒロイン
    誰かまことをちかってゐる……
氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
つぎからつぎと水路をわたり
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎で
ふしぎな曲線カーヴを描いたりする
    (eccolo qua!)
風を無数の光の点が浮き沈み
乱積雲の群像は
いまゆるやかに北へながれる



(下書稿2)

二九

休息

一九二四、四、四、

中空なかぞらは晴れてうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀んでゐる
そこに(約三字不明)人の

(この間数行分不明)

氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
つぎからつぎとまことをちかひ
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎に
ふしぎなおどりをさせたりする
    (Eccolo Qua!)
風を無数の光の点が浮き沈み
乱積雲の肖像は
いまゆるやかに北へながれる



(下書稿1推敲後)

二九

休息

一九二四、四、四、

中空なかぞらは晴れてうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀んでゐる
巨大な洞窟人類の
方向のない Libido をかかげ
ひばりはあちこち啼いてゐる

氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
ねむたいわたしの耳もとに
つぎからつぎとまことをちかひ
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎に
ふしぎなおどりをさせたりする
    (エッコロ クアア)
数知らぬひかりの点がうき沈み
乱積雲の肖像はいまゆるやかに北へながれる

    (eccolo qua!)



(下書稿1推敲前)

二九

雲の肖像画

一九二四、四、四、

中空なかぞら青くうららかなのに
西の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀んでゐる
そこにいくつもの雲の肖像
  ……それはみな(一字不明)に
    巨大な洪積人類の
    方向のない Libido である
ひばりはあちこち啼いてゐる

氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
    (おまへはわたしを犯してもいい)
つぎからつぎとまことをちかひ
またあかしやの棘ある枝を鳴らしたり
すがれの禾草を顫はせる
  ……そこに三本よもぎの茎が
    素撲な木音のおどりをつくる……
    (エッコロ クアア)
風を無数のガラスの渦が浮き沈み
雲の肖像画はゆるやかに北へながれる

    (eccolo qua!)